本当は重要な副大統領ポスト、映画「バイス」にみるその実像

それが実践されるのが2001年の9・11同時テロだ。事件当日、地方遊説中だったブッシュ大統領のワシントン帰着を安全上の理由から押しとどめ、ホワイトハウス地下の危機管理センターで陣頭指揮。予想される攻撃に対する大胆な手段を、大統領にもはからず独断で次々に指示していく。

 同時テロの報復として、実行グループ、アル・カーイダの掃討に加え、イラク進攻を強く主張、政権内の慎重論を排してブッシュ大統領に決断させる。この間、イラクが大量破壊兵器を開発し、アル・カーイダとあたかも緊密な連携をもつかのような印象を内外に植えつける。拷問もいとわず、政権に批判的な勢力に不利になるようなリークをあえてして、政権内部だけでなくフランス、ドイツなどの同盟国の慎重派を抑えていく。

■イラク戦争の責任問う

 イラク戦争は短期間で終結をみたが、戦争中も決着後も、大量破壊兵器は発見されず、崩壊したサダム・フセイン政権とアル・カーイダとの直接的な連携を示す事実も出てこなかった。

 戦争の意義を問う声が米内外でいまもかまびすしいが、「バイス」は、「法律、憲法をねじ曲げた」として、「カゲの大統領」としての責任を問う。これに対してチェイニーは「私は謝罪しない。国民の安全を守るためにやることはやる」と反論する。

 筆者はイラク戦争当時ワシントン勤務だったが、取材経験と重なる部分が少なからずあり興味ひとしおだった。

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