混乱、対立を自己目的化するトランプのイランへの圧力

JCPOAでイランは経済的利益を得られるはずであったから、イランとしてはJCPOAを遵守する動機が著しく減退する結果となっている。

 米国の「最大限の圧力」に対し、イランは当然、反発を強めている。4月下旬には、イランの最高指導者ハメネイ師は、革命防衛隊の司令官をジャファリから、さらに強硬な反米保守派のサラミ副司令官に交代させている。イラン国内の強硬派の発言力が高まっていると見られる。

 そして、5月8日にイランはついに、JCPOAの義務の履行の一部一時停止に踏み切った。即ち、イランは、過剰な重水と濃縮ウランの海外への移転を60日間止めると述べた。イランのロウハニ大統領は、欧州関係国や中露がイランの石油輸出と金融取引を保全することが出来ればこの決定は取り消すとの留保をつけている。イランがJCPOAへの「死亡宣告」をしたとまでは言えないが、JCPOAを救う道は全く見えない。トランプ米大統領は、対抗措置として、同日、鉄鋼、アルミ、銅をめぐるイランとの取引を制裁対象とする大統領令に署名した。これも「最大限の圧力」キャンペーンの一環と見てよい。

 イランは、米国が5月3日に発表した制限措置にかかわらず、濃縮を続けるとしている。イランは、従来、過剰な低濃縮ウランをロシアに移転して来たが、これを止めれば、イランは核合意に定められる量を超える低濃縮ウランを持つことになり、結局JCPOA違反の事態が生ずるのであろう。

関連記事(外部サイト)