メイ首相を辞任に追い込んだアイルランド国境問題

EUが呑めないような「良いとこ取り」の戦略を描いても仕方がない。協議を遂げていれば、労働党は意に沿わない離脱案であっても議会の承認に協力したかとなると、一層不明瞭である。この社説がいうような批判は、後知恵の批判のようにも思える。

 交渉の最大の失敗はアイルランド国境の問題について、いわゆる「backstop」(2020年12月までにアイルランド島における物理的な国境を回避できる解決策が見つけられなかった場合、英国全体がEUの関税同盟に残ることを中核とする案。英国とEU双方が合意しなければ「backstop」から脱却できない)を離脱協定に規定することに同意したことではなかったかと思われる。英国は2017年12月の段階で早々と「backstop」を書き込むことに同意した。離脱協定に規定することを避け得たならば、アイルランド国境問題の解決にはならないが、離脱だけは実現出来た筈である。結局、「backstop」の規定がEUとの恒久的な関税同盟を意味し、北アイルランドを英国本土とは異なる体制に置く可能性があることが最も機微な問題と化した。この問題で交渉の責任者である筈の離脱相が二人辞任した。議会の反対と保守党の分裂が先鋭化した。更に、メイの政権が議会運営を北アイルランドの民主統一党(DUP)の支持に頼る立場にあったことが、この問題の扱いを殊更に難しくした。その意味で、2016年6月にやる必要のない総選挙をやって過半数の多数を失ったこともメイの致命的失敗であった。

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