金融庁「老後資金2000万円」報告書に目新しい事実はない

金融庁「老後資金2000万円」報告書に目新しい事実はない

(itasun / iStock / Getty Images Plus)

■年金問題を巡って繰り返される与野党の争い

 金融庁の審議会が「公的年金だけでは老後の生活資金が2000万円不足する」「公的年金は今後実質的に切り下げられる(調整される)」との指摘を盛り込んだ報告書「高齢社会における資産形成・管理」原案が報道されて以来、自民党は金融庁に報告書の撤回を要求し、その受け取りを拒否するなど政府与党に混乱が広がっている。かかる事態に対して、立憲民主党は「安心安心詐欺」と批判し、2004年の参議院議員選挙で消えた年金問題を追及し第一次安倍内閣を退陣に追い込み、その後の政権交代に繋げた成功体験を忘れられず、二匹目の泥鰌を狙ってか、7月に予定される参院選の争点化を宣言するなど、野党各党が攻勢を強めている。

 しかし、年金問題を政治争点化しても国民には何ら利益がないことは、2009年の政権交代のきっかけとなった「消えた年金問題」は結局解決しなかったことや、消費税引き上げにより社会保障を強化するとした税と社会保障の一体改革も、最終的には消費税引き上げに対する各党のスタンスの違いから頓挫したことなど、これまでの年金改革の歴史を振り返っても明らかだ。

■「100年安心プラン」への誤解

 今回の騒動の発端となった2004年の年金制度改革いわゆる「100年安心プラン」では、少子化、高齢化の進行に鑑み、それまでの年金支給額の増加に応じて現役世代の負担を増加させる仕組みを維持すれば、現役世代の負担が重くなりすぎて、社会保障制度を支える基盤である現役世代の生活が破壊されてしまっては元も子もないという至極もっともな懸念から、現役世代が負担できる範囲内で高齢者への給費水を決める仕組みへと180度転換した。

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