藤野 道格 ホンダエアクラフトカンパニー社長 ホンダジェットが示す製造業の未来

藤野 道格  ホンダエアクラフトカンパニー社長 ホンダジェットが示す製造業の未来

藤野 道格(ふじの・みちまさ):1960年生まれ。東京大学工学部航空学科卒。「Aircraft Design Award」(米国航空宇宙学会)、「ケリー・ジョンソン賞」(SAEインターナショナル)、「ジューコフスキー賞」(国際航空科学会議)を受賞。3賞を同一人物が受賞したのは世界初。

後頭部から背中にかけて「ぐーん」と押されたと思うと、15秒足らずで滑走路から離陸し空中を舞う「鳥」になった。体験搭乗したホンダジェット(最大7人乗り)は急上昇してあっという間に高度約9000メートルに達して安定飛行に。全く未体験の乗り物だった。常識を覆す発想でエンジンを主翼上面に配置したことで、機内は4人が向かい合っても足を十分伸ばして座れるスペースができ、パソコンを置ける2枚の収納テーブルを使えて大きな声を出さずに会話ができる「空飛ぶ会議室」に変身する。小型飛行機を利用したことがある人ほど、この「未体験」をより実感してくれるという。

 こんなジェット機を、航空機業界に初参入の自動車メーカー、ホンダがやってのけた。しかもエンジンから機体まですべて手掛けるという航空機業界でも異例の挑戦だった。この夢を先頭に立って実現したのが、米ノースカロライナ州グリーンズボロに本社・工場があるホンダエアクラフトカンパニー社長の藤野道格だ。

 1986年に新しく始まった航空機研究への異動を命じられ、ホンダジェットの技術実証機を開発し、2003年には初飛行にも成功したが、航空機研究はそこで打ち切りの危機を迎えた。

 しかし、「何としてもジェット機を商品化したかった」という藤野の執念がホンダ経営陣を動かし、世界最大規模の航空ショーEAAエアベンチャー・オシュコシュでの世界初公開で得た周囲の大反響が事業化へと後押しすることとなった。

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