トップ同士で辛うじて命脈をつなぐ米朝外交

ハノイでは、トランプが金正恩に「大取引」を突き付けたとされる。その詳細はよく分からないが、北朝鮮の核兵器と核物質を米国に引き渡すことを含む完全な非核化と引き換えに米国が制裁を解除することを中核とする案だったと伝えられる。そのような過激で一方的な印象のある一発勝負の取引に応ずる用意は金正恩にはなく、それが原因で首脳会談は決裂した。首脳会談が金正恩の顔に泥を塗る形で終わった時から、米朝交渉が動かなくなることは予期されたことである。

 シンガポールの首脳会談から1年になるが、非核化の交渉は全く進まない。だからといって、北朝鮮との交渉を終わらせることに政治的利点はない。「外交は継続中」ということが可能であり、そして北朝鮮の挑発が一定の限度にとどまる限り、膠着状態を維持することはトランプにとって政治的利益である。可能なら、大統領選挙がもっと迫ってから、もう一度首脳会談を行うことがトランプにとって大きな利益となる。3度目の首脳会談に至らなくとも、些か詐欺的であっても北朝鮮外交の成果らしきものを維持し得ていることは重要に違いない。であればこそ、トランプは金正恩からの手紙を利用して関係が保たれていることを誇大に宣伝し、北朝鮮が短距離ミサイルを発射しても挑発行為とは見做していないように装っている。

 一方、金正恩が何を考えているか分からないが、トランプに手紙を寄越したり板門店での会見に応じたところを見ると、制裁の解除を実現したいという少々の焦りはあるかも知れない。

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