上野公園で出会った年金をもらうホームレス

上野公園で出会った年金をもらうホームレス

(Irina Griskova/gettyimages)

年金に関する記事を目にする機会が多いが、新聞、雑誌、ネット記事のいずれも暗い内容のものが多い。夢のある記事はない。そんなときに思い出すのは、上野公園で出会った年金をもらうホームレスである。

■上野公園の出会い

 バブル崩壊後、今と同様に仕事のない私は取材もかねて、上野公園や代々木公園で野宿することがたびたびあった。若い人は知らないだろうが、当時、上野公園には600人を越えるホームレスが住み、ブルーテントがひしめいていた。

 私は、東大大学院卒のホームレス、路上の哲学者、イラストレーター、元コンビニ経営者、大手化学企業の元エリート社員、自称修行僧など、多くのホームレスと親交を結んだが、その中でも悠々自適でバラ色のホームレス生活を送っていたのが、「年金」(あだ名)という北海道出身の元造林業者である。

 私が公園で眠るときは、ダンボールの切れはしで風をよけるだけだったのに、「年金」は羨むべき新築の仮小屋を持っていた。それは、高さ1.5メートル、幅1.5メートル、長さ3メートルほどの木造一戸建。表面に青いビニールシートを被せている。最初に彼の家屋の特異性に気付いたのは、当時一緒にホームレス取材をしていた3歳の息子のほうだった。

 「これ電車だよ。車輪がある」

 底に目を這わせると、家の土台に4つの車輪がある。

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