“影の支配者”イランに深刻な打撃、イラク首相辞任の背景



 しかし、首相選びは各派の利害に直結するため、簡単にはいかない。水面下では利権の配分が話し合われることも多い。アブドルマハディ首相の場合は、首相選びに約1年かかった。イラン革命防衛隊のエリート部隊「コッズ」の司令官ソレイマニ将軍が各派に寝まわしてしてやっとアブドルマハディ政権発足にこぎつけた経緯がある。イラクに駐留する米国はこれに暗黙の了承を与えた。

 米ニューヨーク・タイムズが入手した公電のコピーによると、アブドルマハディ氏はサダム・フセイン独裁政権当時からイランと気脈を通じていたことが明らかになっている。逆を言えば、ソレイマニ将軍は長い時間をかけてイラク内部に“イランの資産”を育て、昨年10月に遂にアブドルマハディ氏を首相に就けたわけだ。首相が辞任すれば、その貴重な投資が無に帰してしまう。“影の支配者”イランが最も打撃を受けることになる理由だ。

■イランでもデモ「革命以降で最も深刻」

 しかし、アブドルマハディ首相が辞任しても反政府運動は収まりそうにない。シーア派最大の勢力の指導者であるサドル師は首相の辞任発表に対し「これは反政府運動の最初の結果でしかない」「辞任は腐敗の終わりではない」「新首相は国民投票で直接選ばれるべきだ」などとデモを続けるよう呼び掛けている。

 イラク政府はネットを遮断し、スマホを通じてデモが動員されないよう措置を講じているほか、デモに好意的な地元のテレビ局などメディアを弾圧、閉鎖した。

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