「好み」だけではなかった日本人が”新築好き”になった理由

「好み」だけではなかった日本人が”新築好き”になった理由

いまは高齢者が多い団地にもかつては子どもたちが多くいた。写真は昭和30年の東京都新宿区の戸山アパート(KYODO NEWS)

「新築信仰」という言葉がある通り、日本の不動産市場では流通する8割以上が新築である。これは日本人の「好み」というだけではなく、ライフステージの変化に対応した物件供給ができていない賃貸市場や、依然として広がる新築向けの宅地造成、住宅ローン減税などの新築優遇税制、その一方で中古住宅市場の不透明さなどが影響している。これらは法的な枠組みにとどまらず、住宅取引の慣行、供給のあり方など、規範・慣習によって形成された広い意味での「制度」に起因している問題である。

 住宅の需給を考えるとき無視できないのは「取引費用」だ。「取引費用」とは、経済的な取引が行われるための情報収集や、取引の履行、権利の保護などにかかる費用のことである。例えば、住宅購入の際に物件が不具合を抱えていないか調べるには費用がかかる。住宅を売ったり貸したりするときにも、買い手が約束した金額を払わなくなるリスクも費用になる。なぜ日本人が「賃貸ではなく持ち家」、さらには「中古ではなく新築」という選択をするようになったのかを分析する。

■ファミリー世帯が賃貸から持ち家に移る理由

 まず着目するのは、貸し手の「取引費用」である。遡(さかのぼ)れば戦前の地代家賃統制令をきっかけとする借家人への強い保護が現在も続いているため、家賃を滞納されても、貸し手がすぐに退去させることが難しい。

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