左官職人が味わわせてくれるかまど炊きのご飯

左官職人が味わわせてくれるかまど炊きのご飯

【宮奥淳司(みやおく・じゅんじ)】
1968年生まれ。専門学校卒業後、奈良市内の一般企業に就職するも、20歳のときに父の仕事を継ぐことを決意する。その後、父のもとで技術を磨き、2002年度には1級左官技能士の国家試験で金賞を受賞した。(写真・湯澤 毅、以下同)

「かまどさん」をご存じだろうか。「おくどさん」「かまさん」「へっついさん」などともいう。地域によって呼び名は様々だが、昔はたいがいどこの家にもあった。土間の台所に作られた炊事用の「かまど」のことである。

 ガスコンロや電気炊飯器の普及と共にすっかり姿を消し、今ではほとんど見なくなった。薪(まき)をくべて裸火を燃やすことが難しくなり、古い家で存在はしていても、まったく使っていないケースが多い。新しく作ったり、修理するのは、よほどの伝統を重んじる旧家か、趣味人に限られる。

 奈良県宇陀市で左官業を営む宮奥淳司さんは、そんな「かまどさん」を何とか後世に残す方法はないかと考えてきた。かまどを作る左官塗りの技術を伝承する職人も全国から姿を消しつつあった。

 きっかけは10年ほど前のこと。奈良市の旧市街地である「奈良町」の町づくり活動をしていた社団法人から、「かまどさん」を作ってほしいという仕事が舞い込んだ。

 それらの施工事例をホームページに載せると、うちでも作ってくれないか、という依頼が来るようになった。全国の飲食店などから年に2、3件の割合で注文が来るようになったのだ。かまど炊きのご飯がブームになったことが追い風になったようだった。

 だが、年にわずか数件では、世の中にアピールするには不十分で、「後世に残す」ことにはならない。

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