中東の安定にウエストファリア方式≠ヘ有効か?

中東の安定にウエストファリア方式≠ヘ有効か?

(romeocane1/iStock / Getty Images Plus)

中東地域問題の解決について、二人の歴史学者(英国ケンブリッジ大学のMiltonとAxworthy)と元英国外交官のSimmsの共著による“Towards a Westphalia for the Middle East(中東のためのウエストファリアに向けて)”が、新鮮なアプローチを提案している。彼らの提案は、近代ヨーロッパの始まりにおいて、“終りのない戦争”であった30年戦争を終結させたウエストファリア方式を、シリア紛争をはじめとする現代の中東問題解決に適用しようとするものである。

 30年戦争は神聖ローマ帝国の末期、ドイツにおいて当時勃興しつつあったプロテスタントの新興勢力が反乱を起こし、これに周辺諸国が次々に介入してヨーロッパ全体を巻き込み、30年にも亘る大戦争であったが、宗教戦争的要素、帝国支配への属領の反乱、国家間の対立など複雑な要因が絡み合った戦争であった。最終的にはウエストファリア条約によって終止符が打たれたが、この条約は国際政治において主権国家の役割が明確にされた条約とし歴史的に大きな意義を持つものとして認識されている。

 ウエストファリア条約の枠組みが今日の中東問題の解決に役立つのは、地域を包含した紛争処理の法的なメカニズムを導入した点においてである。著者たちは、中東における今までの外交的試みが失敗したのは、問題を狭い視野で捉え過ぎたからであり、各紛争は国家の正統性、宗派主義、地域覇権を巡る争い(特にサウジとイランとの間の)のようなすべて地域をまたぐ要因によるものであるので、域内主要国や域外関係国の参加による包括的な解決が必要と主張する。

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