「台湾を香港のようにしてはいけない」の思い、台湾で伝える

「台湾を香港のようにしてはいけない」の思い、台湾で伝える

鐘慧沁さん

香港の言論状況について10分だけ話す予定だった。香港には家族も友人もいる。慎重な発言をしようと思っていたが、コントロールできなかった。口から飛び出した言葉に、友人たちは驚いた。彼らからは「香港にはもう戻れないね」と言われたが、気持ちは、晴れ晴れとしていたという。

 「自分が言いたいことを思う存分に言えることが、こんなに大切だなんて、その時初めて気づかされた。だから後悔はしていない」

 その姿がニュースで報じられると、台中に住んでいるという面識のない男性から電話があった。「感動しました。何か自分にできることはありませんか」。男性は演奏家だというので、自分の店にきてもらい、演奏会を開き、人を集めて、香港問題を語り合った。それから、鐘慧沁が台南郊外の永康に開いた「蝸篆居」という店は、台湾にいながら、香港を知りたい、香港を伝えたい人々が集い、語りあう拠点となった。

 店では、鐘慧沁が台湾各地から探し求めた無農薬、有機の食材を使って、香港庶民料理の代表格である「?仔」(香港式炊き込みご飯)を出す。日中はカフェとして食事やお茶を飲むお客さんで賑わい、夜には、香港関連の集会が毎週のように開かれる。壁には「香港と共に戦おう」「台湾は台湾人の台湾」「どこにも関係のない人などいない」などのポスターやチラシがベタベタと貼られている。

 この店に、鐘慧沁は私との約束より10分ほど遅れて現れた。

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