デザイナーが再発見した銭湯の価値とは?

デザイナーが再発見した銭湯の価値とは?

【日野 祥太郎(ひの・しょうたろう )】
多摩美術大学情報デザイン学科卒業。15年に銭湯特化型のウェブメディア「東京銭湯 ? TOKYO SENTO ? 」をローンチし、16年、株式会社東京銭湯を立ち上げ、並行して同年4月に埼玉県川口市で銭湯「喜楽湯」の経営を開始。(写真・湯澤 毅、以下同)

「代表取締役番頭」という一風変わった名刺を持ち歩く若者がいる。日野祥太郎さん、35歳。埼玉県川口市にある喜楽湯を経営する。風呂屋の番台(フロント)に立つから番頭というわけだ。

 「昔は町々にあってコミュニティーの『場』だった銭湯の機能を復活させたいと考えたんです」

 本業はデザイナー。25歳でフリーランスとなり、広告や宣伝、ブランディングといった仕事を請け負ってきた。プロフェッショナルの多くは、仕事に行き詰まったり、疲れたりすると、必ず訪れる自分なりの「場」を持っている。バーのカウンターでひとり静かに酒を飲み、リラックスして考えを巡らせる、というのも典型的な例だ。日野さんもバーに通うが、それだけでは足りないと感じた。

 そんな時、出会ったのが近所の銭湯だった。大きな湯船につかり、のんびりと時を過ごす。リラックスすると思いがけないアイデアが脳裏に浮かぶものだ。日野さんはすっかり銭湯にハマった。

 そんなある日、東日本大震災が日本を襲った。地域の人たちの助け合いや、身を寄せる「場」の重要性をひしひしと感じた。そうだ銭湯だ。

 東京都内には今も約540の銭湯がある。昔は町内には必ず銭湯があって、風呂に入りに来る人たちのコミュニケーションの場になっていたが、そんな機能が失われて久しい。

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