「移民は地域経済にプラス」「格差拡大はグローバリズムが原因ではない」 常識を覆す「絶望を希望に変える」ノーベル賞受賞経済学者の理論とは? 【【橘玲の日々刻々】

「移民は地域経済にプラス」「格差拡大はグローバリズムが原因ではない」 常識を覆す「絶望を希望に変える」ノーベル賞受賞経済学者の理論とは? 【【橘玲の日々刻々】

アメリカへ向かう移民たちのイメージ イラスト: Doomko / PIXTA(ピクスタ)

アビジット・V・バナジーとエステル・デュフロは、インドやアフリカなど発展途上国を舞台に、RCT(ランダム化比較試験)を使って経済政策を検証する独創的な研究を行ない、2019年に夫婦そろってノーベル経済学賞を受賞した。バナジーはインド、コルカタ生まれで、アジアからはアマルティア・センに続いて2人目、デュフロはノーベル経済学史上最年少で、なおかつ2人目の女性受賞者になる。

 そのバナジーとデュフロが2019年に刊行した『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』(日本経済新聞出版)は、トランプ誕生後の混迷するアメリカ社会に経済学はなにができるのか、という困難な問いに答えようとしている。2人がこの本を書こうと決めたのは、「富裕国が直面している問題は、発展途上国で私たちが研究してきた問題と気味が悪いほどよく似ていることに気づいた」からだという。

 原題は“Good Economics for Hard Times(困難な時代のためのよい経済学)”だが、邦題は本書のテーマをよく表わしている。とはいえ、「絶望を希望に変える」魔法のような処方箋があるのだろうか。

 なお、バナジーとデュフロの開発経済学での仕事をまとめた『貧困と闘う知 教育、医療、金融、ガバナンス』(みすず書房)は以前紹介した。

[参考記事]
●RCTにより明らかになったマイクロクレジットの“奇跡の物語”と不都合な真実

貧しいひとたちは経済的に「合理的」な計算をして移民・移住を選択しないことが多い 2017年初めにインターネットベースの市場調査会社が「以下の職業の人たちがそれぞれ自分の専門分野についての意見を述べた場合、あなたは誰の意見をいちばん信用しますか?」と訊いたところ、1位は看護師(84%)で最下位は政治家(5%)、経済学者は下から2番目の25%だった。

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