ウクライナ侵攻の背景にある ロシアと中・東欧・バルト諸国の「記憶をめぐる戦争」 【橘玲の日々刻々】
2022年05月11日 21時00分 ザイ・オンライン
2014年にハンガリーのブダペストを訪れたとき、歴史展が行なわれていたらしく、街じゅうで「Double Occupation(二重占領)」と書かれたポスターを見かけた。最初はなんのことかわからなかったのだが、その後、ハンガリーの現代史を展示する「恐怖の館(House of Terror)」博物館を訪れて、これが20世紀におけるファシズム(ナチスドイツの傀儡政権である矢十字党=国民統一政府)と、その後の共産主義支配(ソ連の衛星国家)という「民族の悲劇」を表わす言葉だと知った。
5月9日の(第二次世界大戦)戦勝記念日の演説で、ロシアのプーチン大統領は、「世界からナチスらの居場所をなくすために戦っている」とウクライナ侵攻を正当化した。ところがそのプーチン政権を、歴史家ティモシー・スナイダーは「ポストモダンのファシズム」だとする。
[参考記事]
●ウクライナ侵攻の背景にあるプーチンの「ロシア・ファシズム」思想。ロシアは巨大な「カルト国家」だった
だとしたら、いったいどちらが「ファシズム」なのだろうか。マルレーヌ・ラリュエルの『ファシズムとロシア』(翻訳:浜 由樹子/東京堂出版)はまさにこの問題を扱っている。
ラリュエルはフランス出身の歴史学者で、現在はアメリカのジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所長。
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