ひとは幸福になるために生きているけれど 幸福になるようにデザインされているわけではない [橘玲の日々刻々]

ひとは幸福になるために生きているけれど 幸福になるようにデザインされているわけではない [橘玲の日々刻々]

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 まずはきわめてシンプルな事実から語りはじめたいと思います。それは、

あなたがいまここに存在することがひとつの奇跡

 ということです。

 とはいえこれは、哲学や宗教、あやしげなスピリチュアルの話ではありません。父親と母親が出会い、2人の遺伝子からたまたまひとつの組み合わせが選ばれてこの世に生を受け、さまざまな出来事を体験し、多くの出会いや別れがあり、現在に至るまでには膨大な数の偶然の積み重なりがあります。この偶然を「奇跡」と呼ぶならば、これは誰でも知っている当たり前のことをいっているだけです。

 そうした偶然のなかでもとくに強調したいのは、

いまの時代の日本に生まれたということが最大の幸運である

 ということです。

 ここで、すぐにあちこちから批判の声が聞こえてきそうです。日本経済は四半世紀に及ぶデフレに苦しみ、非正規雇用やワーキングプア、ニートや引きこもりが激増して、若者はブラック企業で過労自殺するまで働かされ、老後破産に脅える高齢者には孤独死が待っているだけだ、というのです。

 私はこうした日本の現状を否定するわけではありません。しかしその一方で、この島国から一歩外に出てみれば、「下を見ればきりがないが、上を見るとすぐそこに天井がある」という現実にたちまち気づきます。

 戦争や内乱で故郷を奪われ真冬の荒れた海を渡る以外に生き延びる術のない難民たちや、IS(イスラム国)の狂信者集団に支配されたひとびとのことだけをいっているのではありません。

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