ヨーロッパの極右や排外主義者は リベラルな社会が生み出した新たな「マイノリティ」だ 【橘玲の世界投資見聞録】

世界金融危機の直後に刊行した『チャヴ 弱者を敵視する社会』(海と月社)で、オックスフォード大学卒の20代のライター、オーウェン・ジョーンズは「21世紀の左翼の騎手」として世界的に有名になった。チャヴ(Chavs)とは、知識社会=グローバル世界から脱落した貧しい白人労働者への蔑称で、イギリスではミドルクラス(エリート階級)とワーキングクラス(チャヴ)の分断が進んでいる。

[参考記事]
●イギリスの地方都市にふきだまる「下級国民」、チャヴは蔑まれ、嘲笑される白人の最貧困層

『チャヴ』のなかでジョーンズは、2010年の総選挙で左派議員のために戸別訪問したときの体験を書いている。

(数カ月ぶりによく晴れた日曜日で、ほとんどの家は外出していたため)数軒訪問して空振りしたあと、エプロンをつけた中年女性がついに出てきた。彼女は明らかに、気持ちを打ち明けたがっていた。「うちの息子は、仕事を見つけられないの」と彼女は怒った。「でも、移民はこんなにたくさん入ってきて、みんな就職している。移民が多すぎるのよ!」

 こうしてジョーンズは、貧困や格差、差別とたたかう左翼運動の中心となるべき貧困層が“排外主義者”になっているという不都合な事実に向き合わざるを得なくなった。それは、移民排斥を掲げるイギリス国民党(BNP/British National Party)の躍進に象徴されていた。

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