ブレグジットとアメリカのトランプ大統領誕生に多大な影響を与えた ケンブリッジ・アナリティカ事件の内幕と「行動マイクロターゲティング」の手法 【橘玲の日々刻々】

ブリタニー・カイザーの『告発 フェイスブックを揺るがした巨大スキャンダル』(ハーパーコリンズ・ジャパン)は、ケンブリッジ・アナリティカ事件の内幕を描いたとても興味深い本だ。それに加えて、いまアメリカ全土で起きている混乱の背景を知ることもできる。といっても、まずは「ケンブリッジ・アナリティカ(CA/Cambridge Analytica)」とはなんなのか、から説明しなくてはならないだろう。

 2016年は現代史に長く記憶される2つの大きな政治的事件が起きた。いうまでもなく、イギリスの国民投票でのEU離脱(ブレグジット)とアメリカのトランプ大統領誕生だ。選挙コンサルティング会社であるケンブリッジ・アナリティカは違法に収集した有権者の個人データを使って両者の選挙結果を操り、「(リベラルにとっての)災厄」をもたらした悪の元凶としてはげしく非難され、この「データゲート事件」によって2018年に会社は消滅した。

 『告発』の著者ブリタニー・カイザーは1987年にテキサス州ヒューストンに生まれ、シカゴで育ち、イギリスで大学教育を受けたあと、博士論文を書きながら給料のいい仕事を探していた。カイザーは共働きの裕福な家庭に育ったが、エンロンに勤めていた母親が2000年の倒産(エンロンショック)で仕事を失い、ついで父親が経営していた不動産会社が2008年のサブプライム危機(リーマンショック)で破綻し、うつ病を患ってしまったのだ(その後、じつは脳腫瘍だったことがわかる)。

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