映画『マッドマックス2』の世界観を持つ「サバイバリスト」は、 ダークステイト(闇の政府)が世界を支配し、 明日にも「終末」が訪れてキリストが再臨すると信じている 【橘玲の日々刻々】
2020年12月31日 21時00分 ザイ・オンライン
タラ・ウェストーバーの『エデュケーション』(早川書房)は、ビル・ゲイツやミシェル&バラク・オバマが絶賛したことで、全米で400万部のベストセラーとなった。
中西部アイオワ州の片田舎に生まれた少女は、きわめて特異な環境で育つことになる。両親は厳格なモルモン教徒で、とりわけ父親は「サバイバリスト」と呼ばれる極端な原理主義者だった。
サバイバリストは明日にも「終末」が訪れてキリストが再臨すると信じている サバイバリストの特徴は、政府は陰謀組織(ダークステイト)によって支配されている信じ、いっさいの公共的なものを拒否することだ。これは教育だけでなく、医療や社会保障のような公共サービスも含まれる。
その結果、タラは小学校から高校まで、いちども学校に通ったことがなかった。こうした子どもは「ホームスクーリング」によって自宅学習していることになっているが、親から習ったのはモールス信号だけだった。
アメリカではホームスクーリングの権利が広く認められているが、これは教育の多様化というよりも、保守的な宗教原理主義者(聖書に反する進化論などを子どもに教えたくない親たち)への配慮で、すくなくともタラの場合は、家庭でどのような教育が行なわれているのか、公的機関による確認はいっさい行なわれていない。
もうひとつのサバイバリストの特徴は、明日にも「終末」が訪れてキリストが再臨すると信じていることだ。