波紋を呼ぶドイツの「フェイクニュース規制法」とは

文=ジャーナリスト
稲木せつ子

再選を目指したメルケル首相の作戦か?

 昨年「フェイクニュースが米大統領戦の勝敗に影響したのでは?」と議論が巻き起こったとき、欧州の指導者は「自国の選挙でも同じことが起きるのではないか」と疑心暗鬼になった。とりわけ、10カ月後に総選挙を控えていたドイツのメルケル首相は敏感に反応し、連邦議会で「必要なら(フェイクニュースを)規制すべきだ」と説いている。当時、彼女は難民問題の扱いで支持を下げており「ベルギーでの連続テロ事件実行犯は、メルケルとセルフィー(自撮り)した難民だった」とするフェイクニュース攻撃を受けていた最中だった。偽情報の拡散ルートがフェイスブックなどのSNSだったため、矛先が大手ソーシャルメディアに向かった。

 ドイツ政府のSNS規制に向けての動きは、メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の支持率低迷と絡み合っている。左のグラフが昨年9月以降の主要政党支持率の推移だが、メルケル首相の政党が窮地に陥るタイミングで、物事が進展している。

 法案は、連立を組んでいる第2政党・社会民主党との共同提案。極右勢力の台頭を警戒した両党が、呉越同舟でSNS規制に動いたようだ。

 3月に法案が出て、規制の大義は「ネットで野放し状態のヘイトスピーチ(憎悪表現)の取り締まり」で、フェイクニュース(偽情報)も規制するというスタンスだとわかるが、前述のメルケル+難民の中傷はこの両方に該当する。

1 2 3 4 次へ

関連記事(外部サイト)