改元をめぐる天皇報道 奉祝と美談の嵐のなかで 平成の「象徴」とは何だったのか?

報道番組に喝!【NEWS WATCHING】76
文=古川柳子

「平成最後の……」は
魔法の呪文?

 まるでその呪文を唱えれば「新しい時代」が来るかのような奉祝ムードが、「平成最後の……」の連呼と共に4月30日のテレビ画面には溢れた。どうも「明るい改元」の祝い方に慣れていないせいか、特番タイトルを並べてみると、各局ほとんど年越し特番モデル。「ゆく時代くる時代」(NHK)、「『令和』改元列島中継」(日本テレビ)、「日本のヒーロー総選挙・平成最後のランキング」(テレビ朝日)、「生放送!平成最後の日」(TBSテレビ)、「池上彰の改元ライブ!」(テレビ東京)、「平成の“大晦日”令和につなぐテレビ!」(フジテレビ)という具合で、これも似たような番組のオンパレードという印象の一因だったように思う。テニスコートの恋に始まり、新しい皇室像への挑戦、被災地への見舞いや戦地への「慰霊の旅」など、上皇・上皇后となられるお二人の美談と平成時代を重ねて、朝からすべてのチャンネルで繰り返し流されると、平成の神話が塗り固められていくプロセスに立ち会っている気がした。

 本来なら、まだご健在の天皇が譲位を提起され、多くの国民の理解のもとで特別法を作って実現したこの退位の機会に、一般の日本人が日本の「象徴」とは何なのかを考える好機だったはずだが、その契機を提供してくれるような報道はきわめて少なかった。

 そんななか、天皇と国民の関係について多くのことを考えさせてくれたのはNHKスペシャル「日本人と天皇」だ。皇位継承の際に天皇が行う大嘗祭を詳細な取材のうえで再現した映像は、天皇の存在が神話の神への奉仕者に根源があることを明確にした。鎌倉から江戸にかけて神仏が併存する時代には天皇もそのバランスの上に存在してきたこと、即位の儀式を庶民が見物するような時代もあったことなどを辿り、天皇を国家の統治者として祭り上げられた明治時代は天皇の存在が大きく変質した時代と位置付け、天皇と国民の関係は歴史のなかで流動的に変わってきたことを示した。

 そのうえでこの番組は戦後の皇室典範の見直し議論にも踏み込んだ。戦争直後から三笠宮は女帝の可能性や皇室の人権について問題提起をしており、小泉政権の有識者会議では女系天皇容認まで提起された。そこに常に立ちふさがる保守勢力が主張する皇位継承者は男系男子の伝統を厳守すべきとする「日本古来の伝統・文化」が側室を前提とする婚姻習慣に支えられたものだったことも露にされる。しかし、小泉政権時の「皇室の伝統を守る一万人大会」の映像などを目の当たりにすると、「伝統」の名のもとに、明治起源の国家と天皇を結びつけようとする力は、日本の中枢に実は根深く存在していることが実感された。

 現在の日本国憲法第1章、第1条には周知のとおり「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する日本国民の総意に基づく」という文言が掲げられている。だが令和へのカウントダウンで浮かれる日本人は、憲法の冒頭に「天皇」について掲げられていることの意味を、どれだけ考えていただろう。

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