放送ビジネス停滞をバネに 若手テレビ人が抱く夢

文=
ジャーナリスト
稲木せつ子

海外は「ニューフロンティア」

 ここ数年、「MIP」の名で知られる番組見本市を取材しているが、4月に仏、カンヌで開催された見本市(※1)では、日本の若手制作者の姿を多く見かけた。国内のテレビ視聴率の低迷からか、海外市場に目を向ける放送局が増えており、若手の活力にも期待が寄せられているようだ。

 好例は、大阪の朝日放送テレビだ。NBCユニバーサル(NBCU)と番組フォーマットを共同開発することになり、MIPに若手制作者を出張させて初会合をした。また、日本の最新番組フォーマットを紹介するイベント(※2)(在京・在阪8放送局が共催)でも彼らを活用している。英語で朝日放送テレビの番組説明をしたのは、系列会社ABCリブラの吉村鉄平ディレクター。紹介した料理番組のパイロット版を手がけた。海外向けの番組を制作した経験者が身近におらず、手探りだったそうだ。初MIP体験については、「自分たちの作った番組の行き先が放送で終わらず、その先に繋がっていて、門戸は開かれていると感じた」と前向きで、「海外の制作会社が競争相手だと意識した」とのことだ。今後、NBCUとの共同開発に生かしたいと意気込んでいた。

 同様に初MIP体験で刺激を受けたのは、TBSテレビの斉藤彩奈さん。TBSは、十数年も前から編成とバラエティ制作者をMIP視察させているが、ドラマ制作育ちの斉藤さんは、見本市の存在も知らなかったという。バラエティとの兼務になり視察の機会を得たが、ドラマのバイヤーとして参加。リメイクできそうな作品を探した。新番組の収録があり視察期間は2日に限られたが、事前にコーディネーターと相談し、面談予約を取ってもらっていた。到着直後にドラマの試写を見て、翌朝から会議に臨んだ。「好きなドラマと社の方針に合うドラマのどちらを視察すべきか悩みましたが、朝一番に出会ったドラマがとても良くて、自分が面白いと思うものを探すことに決めました」と元気ハツラツ。アポの合間は会場を巡って、気になるポスターがあるところに飛び込んで話を聞いてきたそうだ。成果については、会社に提案したい作品も見つかったようだが、それ以上に刺激的だったと語る。「番組は日本向きでないがドラマのエッセンスで生かせるものがあり、『これは使える!』と思わずほくそ笑んでしまいました」と屈託なく笑い、「もっと制作者が視察できたら良い」と話してくれた。

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