皇位継承問題を真正面から描いた力作〜NHKスペシャル「日本人と天皇」

ギャラクシー賞月間賞:NHKスペシャル
「日本人と天皇」

4月30日放送
20:00〜20:54
日本放送協会

 5月1日の改元前後は、生前退位ゆえ全体に祝賀ムード一色で、日常から多様性とか多角的な分析の必要性を説いていたマスコミ精神はいったいどこに行ってしまったのかと思うほどだった。そんななか、皇位継承問題を正面から取り上げたNHKスペシャル「日本人と天皇」が異彩を放った。しかもあと4時間で令和元年というタイミングだ。

 番組では吉田茂内閣で法制局長官を務めた入江俊郎氏の遺品から、1946年に女帝問題の再検討を訴えた三笠宮直筆の意見書を見つけ出し、「男系の男子が継承する」とした皇室典範に疑問を呈していたことを明らかにした。また、(新天皇を入れて)126人の天皇の約半数が側室の生んだ子であり、ここ400年で側室の子でないのは(当時)3人だけという意外な事実が小泉内閣の皇室典範改正諮問会議で示されたことまで伝えた。その会議の委員で元官房副長官の古川貞二郎氏が「(このままであれば)象徴天皇制は自然消滅する」とまで言っているのは衝撃的だ。一方、女性天皇・女系天皇が即位できるように改正しても、「マスコミが騒ぎすぎるから配偶者になる方がいるのか」と懸念する三笠宮のラジオ・インタビューも紹介した。皇位継承問題を考えるうえで、これらのあまり知られていない事実を明らかにした意義は極めて大きい。

 かつて司馬遼太郎は新聞記者の職業上必要だが卑しむべき一つとして雷同性を挙げていたが、この改元騒動をマスコミの安易な同調と見る人がいた。5月23日の『論座』(朝日新聞社)で水島宏明氏は詳細に各局の報道を検証し「『ことほぐ』ムードに水を差すことを控える意識が送り手側の間で働いた」と分析し、6月3日付民間放送の機関紙で水島久光氏は「面倒なことは考えたくない逃避願望が透けて見える」「これを機会に『考えるテレビ』を取り戻せ」と訴えた。

 現場のテレビマンたちは、横並び意識でつくる同じような番組はオリジナリティがないと叩き込まれたはずだ。数十年に一度だから、放送局の数だけ違う平成・令和特番があってほしかった。(福島俊彦)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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