人間が人間を考えていた時代〜NEWS23「三島由紀夫vs東大全共闘」

ギャラクシー賞月間賞:NEWS23
「三島由紀夫vs東大全共闘」

5月16日放送
23:00〜23:56
TBSテレビ

 皇位が継承されておよそ二週間後、「NEWS23」はTBS社内に残っていた三島由紀夫と東大全共闘の討論の模様を放送した。

 思想的には天皇主義者であるが戦後の天皇制を批判していた三島と学生運動の旗手たちの思想は正反対ながら、三島が「これは100円以上のカンパを出して集まってるそうですが、私は謀らずも諸君のカンパの資金集めに協力していることになる。できればその半分を私の『楯の会』につぎ込みたい」と言って学生たちを笑わせたかと思うと、学生側も、思わず三島のことを「三島先生」と呼んでしまう場面もあった。

 こうした和やかさがあるのは、互いに敬意を持って認め合うところは認め合っているということの証明であり、また議論が持論を感情で押し付けあうものではなく、知性でもって対話していることの証拠のようにも思えた。

 この模様は本として刊行されてはいるが、映像で見るとまた違う。映像の力が実感できたのは、全共闘最高の論客と言われる芥正彦の登場シーンだ。彼は長髪にモヘアのような素材のグレーのルーズなセーターを身につけ、けだるそうな雰囲気を出し、自らの赤ん坊を頭に乗せて三島に向かう。三島の冗談に笑う学生たちのようなシーンも含めて、文だけでは伝わらない空気がそこにはあった。

 この放送では、その芥正彦がVTRで登場し、この討論を2019年のいま、振り返り「人間が人間を考える時代の最後だった気がする」と述べているのだが、VTRを見ていると、その言葉がまさにあてはまる討論であったと同時に、現在の右派と左派の討論で「人間が人間を考えるためにある」ものが実現可能なのだろうかと考えさせられる。

 討論会での最後、三島も学生たちに「言霊をとにかく残して去っていくので、これは問題提起に過ぎない」と語っていたが、まさにこの番組でこの討論会を取り上げる意義と、ぴたりと重なるように思えた。 (西森路代)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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