英国の新首相は「ボリス」に?テレビの人気者が国を統治するかも

文=在英ジャーナリスト
小林恭子

 英国の欧州連合(EU)からの離脱(Brexit=ブレグジット)はいつ実現するのだろうか?

 当初の離脱予定日は3月29日だったが、英下院の迷走のため離脱日は数回延期された。現在の予定では10月31日に離脱のはずだが、これも100%そうなるとは言えない。

 下院で英政府とEU側が決めた「離脱協定案」が否決され続けたことを受けて、5月末、メイ首相は涙の党首辞任表明を行った(6月7日、辞任)。

 6月10日、党首選の火ぶたが切られた。大物政治家がわれもわれもと手を挙げたが、どの世論調査でも独走状態にあるのが「ボリス」こと、ボリス・ジョンソン前外相だ。

ファーストネームで呼ばれる唯一の政治家

 ボリスとは、一体どんな政治家なのか?

 英国の政治家のなかで、誰もがファーストネームだけで呼ぶのは、ボリス・ジョンソン(55歳)しかいない。金髪のボサボサ頭の下には笑みをたたえる青い瞳、丸っこい体格をスーツに押し込み、ヘルメットを被って自転車に乗る。ズボンの裾を車輪に引っかからないように靴の中に入れ、背中にはリュックサック。「服装にはこだわらない」様子を見せながら、スイスイとロンドン市内をサイクリングする姿を報道陣が追う。声をかければ、新聞の見出しになるようなセリフ、ジョークを言ってくれるかもしれないからだ。

 ボリスは1964年、ニューヨーク生まれ。両親は上・中流階級に属する富裕な英国人夫妻で、母はアーティスト、父はのちに欧州議会議員となる。オスマン帝国(現在のトルコ)末期の内務大臣アリ・ケマルの子孫で、父方の先祖には18世紀の英国王ジョージ2世がいる。

 英国の典型的なエリート層のコースをボリスも歩んだ。名門中等教育機関イートン校からオックスフォード大学に進学。2年後輩がデビッド・キャメロン前首相だ。卒業後は保守系全国紙『デイリー・テレグラフ』の記者、政治週刊誌『スペクテイター』の編集長を務め、2001年下院議員に当選している。

 ボリスが国民的に名前を知られるようになったのは、BBCの政治風刺番組「ハブ・アイ・ガッタ・ニューズ」に数回出演したことがきっかけだ。その時々の時事問題を鋭く斬り、笑いを誘う番組のなかで、ジョークの受け答えをするボリスの姿が全国に流れた。「エリート層なのにジョークがわかる、自分で自分を笑える人物」として好感を得た。国民のなかにはエリート層に対する反発とともに敬意の念もあり、「気さくなエリート」として自分を演出したボリスは、労働者階級も含めた広い層の国民に強いアピール力を持った。

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