見えてきた裁判員制度の課題〜NNNドキュメント'19「裁判員裁判10年〜死刑判決はなぜ覆るのか〜」

ギャラクシー賞月間賞:NNNドキュメント'19
「裁判員裁判10年〜死刑判決はなぜ覆るのか〜」

6月9日放送
24:55〜25:50
読売テレビ放送

 市民が地裁の刑事裁判に参加して刑罰まで決める裁判員裁判が始まってから、いつの間にか10年が過ぎた。そこで死刑が選択されながら上級審が覆した事例にかかわった裁判員、裁判官ら当事者の声を幅広く紹介。制度の今後を慎重に見きわめようと努めた。

 法律の専門家だけが行っていた判断に、市民感覚を取り入れるのが裁判員裁判。被害者感情は反映されやすくなり、民主主義の実現にも役立つとされる。そのメリットが如実に発揮されたのが死刑判決だが、これまでに5件が上級審で覆されている。三審制である以上、一審判断が変更される可能性は常にあるが、仕事を休んで裁判所に通いつめ、事件と長期間、真剣に向き合った裁判員たちのやるせない言葉の数々は、制度に疑問を投げかけるだけの説得力に満ちている。

 とはいえ、上級審の裁判官たちが死刑について「刑罰の公平性がものすごく強く要請される」と口々に言うのも納得できるし、最高裁が判決のなかで「罪の重さは直感で決めるべきでない」としたのもその通りだろう。これをもって裁判員裁判を最高裁が軽視していると考えるのは早計だ。国家が人を裁くのはそれほど困難なのだろう。とはいえ、本腰を入れるのは上級審、との戦略が弁護側に透けて見えたという裁判員の言葉は、制度の形骸化を感じさせた。

 そのなかで、裁判員には事実認定までを任せ、量刑はこれまで通り職業裁判官が行う「陪審制」を導入すべしとの意見は傾聴に値した。

 10年を経た今、裁判員の辞退率は8割を超えるという。それでも書面を法廷に提出するだけで、わずか数分で終了してしまう従来の刑事裁判の現実が変化し、きちんと証人尋問などを行う公判中心主義に変わってきたのは、大きな成果ではないか。そうした進歩や課題を将来の刑事司法にどう生かしていくか、裁判員と上級審双方の言い分をバランスよく、わかりやすくまとめた。被害に遭われた遺族には過酷な現状だが、だからこそ今一度、国民的議論が必要だろう。そのきっかけとなる報道機関らしい力作だ。(旗本浩二)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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