仕事は人生のためにあるのだ〜火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります。」

ギャラクシー賞月間賞:火曜ドラマ
「わたし、定時で帰ります。」

4月16日〜6月25日放送
22:00〜22:54
TBSテレビ TBSスパークル

 吉高由里子演じる主人公・東山結衣は、勤務中は効率よく仕事をこなし、タイトルどおり「定時」で仕事を終えることを信条にしている。定時で帰ることは、言ってみれば当たり前のことではあるが、それが特別なことになってしまっているのが「働き方改革」が叫ばれる日本社会の現状だ。そんななかで「残業ゼロ」を貫こうとする主人公。そのタイトルと人物設定を聞いて、主人公の“正義”を周りに押し付けるようなドラマではないかと危惧したが、それは杞憂だった。

 彼女の職場には、厳しい職場環境で育ったゆえ自分にも他人にも厳しく、熱があっても仕事を休まない女性、家に帰ってもやることがないからと、非効率な仕事の仕方で会社に棲み着く男、出産後すぐに職場復帰しがむしゃらに働く先輩、やる気がなくすぐに「辞めたい」と口にする新人など、さまざまな仕事観を持った人々が一緒に働いている。主人公は優秀だが決してスーパーヒロインではない。自分ひとりで何でも解決してしまうのではなく、それぞれと向き合い、彼らの価値観と折り合いをつけながら、働くことの意味を問い直し、「仕事が第一」といった思い込みを解きほぐしていくことで、働きやすい環境を作ろうと奔走する。

 一方、上司である福永(ユースケ・サンタマリア)は「仕事がないよりあったほうがいい」と、採算度外視で無茶な条件の仕事を取ってきてしまう。そんな状況のなかで、なんでも仕事をこなし、人手が足りない部分を残業で穴埋めし、トラブルも処理してしまう完璧な男として登場するのが東山の元婚約者・種田(向井理)だ。通常のドラマであればヒーローだろう。事実、彼の存在のおかげでなんとか問題は解決する。しかし、それは結果的に問題の根本的な解決を先送りさせ、会社の“ブラック化”を押し進めてしまうのだ。現在の日本社会の病理を鋭く描いている。

 仕事のために人生があるのではなく、人生のために仕事がある。重くなりがちなテーマだが、吉高の持つフワッと柔らかい雰囲気が、ドラマに適度な軽さを加えていたことも効いていた。(戸部田 誠)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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