米ホワイトハウス記者の戦い 激変したメディアと政権の関係

文=ジャーナリスト
津山恵子

記者会見からぶら下がり形式へ

 ドナルド・トランプ大統領の就任とともに、米国では過去2年半の間、メディアと政権の関係が激変した。ホワイトハウスと記者会が過去に築き上げてきた慣例は、ほとんどなくなったか、あるいは大きな変更を強いられた。一方で、トランプ氏自身が「ぶら下がり」という過去にはなかった形式で、メディアとは日々接している。こうしたなか、ホワイトハウス担当記者らは、ニュースを正しく伝えるため、計り知れない努力と、政権との戦いを強いられている。

 そのやり取りは、かなり凄まじい。今年4月にネバダ州ラスベガスで開かれた2019年全米放送事業者協会(NAB)ショーで、「ホワイトハウス担当記者らの語り」と題するセッションがあり、ネットワークテレビ局ABC、NBCとCBSニュースラジオのホワイトハウス担当記者らが一堂に会した。

 ABCのセシリア・ヴェガ記者は、過去の取材との違いをこう説明した。

 「オバマやクリントン、ブッシュの頃は、今とは異なり、日々、その日のニュースとなる政策についてオフレコの説明があり、その次にオンレコでカメラを回していい記者会見があって、同じことが伝えられ、それを、イブニングニュースで放送していた。でも、今はそんなものはない。政策がないがしろになっているだけでなく、トランプ大統領が政策以外のことを話したがるからだ」

 なぜそうなっているかというと、現在、日々の政策の説明をするための大統領報道官による記者会見が開かれていないためだ。その代わり、トランプ大統領が要人と会った後の記者会見、あるいは、出張の際、専用機に乗る前後に「ぶら下がり」で質問に応じるようになった。過去の大統領にはなかった接触の瞬間だ。

 この結果、記者がみなレコーダーを突き出し、原稿やリポートに必要な質問を怒鳴り合うようになった。トランプ氏は、お気に入りの保守系メディアだけ指名するか、注意を引いた質問にだけ答える。

 しかし、大統領との接触時間が「ぶら下がり」取材で増えたとはいえ、限界があるという。前出・NABショーのセッションに登壇したCBSニュースラジオのスティーブン・ポートノイ記者はこう発言した。

 「確かに、大統領に直接質問をするチャンスはある」としながら、「しかし、何が起きているのかを国民にわかってもらうための、きちんとした場所での定期的なチャンスというものがない。私たちに残されているのは、狂ったような、責任もなく、混乱した(大統領との)言葉のやり取りだけだ」

 同様に、NBCのヘイリー・ジャクソン記者も、大統領がホワイトハウスで姿を現すたびに、カメラマンらが「肘で押しのけあいながら」(同記者)撮影場所を確保し、大統領専用ヘリコプター「マリンワン」の轟音のなか「肺から声を絞り出して」(同記者)質問を怒鳴る状況が、取材として重要である「フォローアップの質問をする機会を奪っている」と不満を漏らした。

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