原作の味わいを損なわない理想的ドラマ〜ドラマ24「きのう何食べた?」

ギャラクシー賞月間賞:ドラマ24
「きのう何食べた?」

4月5日〜6月28日放送

24:12〜24:52

テレビ東京 松竹 「きのう何食べた?」製作委員会

 小さな法律事務所で働く弁護士の筧史朗(西島秀俊)と美容師の矢吹賢二(内野聖陽)。互いを“シロさん”“ケンジ”と呼び合い、穏やかな同居生活を送る二人の生活を食卓を通して描いた本作は、人気同名漫画の満を持しての映像化。原作ファンも納得の主役二人のキャスティングがスタート前から話題を呼んだが、シロさんの買い物仲間の佳代子さん(田中美佐子)を筆頭に、息子に理解を示そうとしつつどこかズレていってしまうシロさんの母親(梶芽衣子)、友人の同性カップル・小日向さん(山本耕史)とジルベールこと航(磯村勇斗)といったサブキャラクターの面々もまた見事なハマリっぷりで、原作が持つ独特の味わいを残しつつ、ドラマならではの見応えがしっかり加えられていた。

 登場人物たちの感情の機微を繊細に捉えながらも、さらりと描くのがよしながふみによる原作漫画の魅力だが、実写となればどうしてもその感情に濃い陰影が追加されてしまう。今作では、それがいいほうに作用していたように感じる。例えばケンジが小日向さんと二人で食事をする予定のシロさんに向けて「絶対二人きりで会わないで」と囁くように言う場面の切迫感。あるいはシロさんが年末にケンジを実家へ連れていくことを決意する場面で感情が溢れた瞬間のシロさんの声の震え。こうした心を揺さぶられるような表現は、西島秀俊と内野聖陽という生身の人間が演じるからこそ生まれたものだ。また、第8話に登場するケンジの友人の同性カップル、ヨシくん(正名僕蔵)とテツさん(菅原大吉)のエピソードで、テツさんが自分の財産を残す相手について心情を吐露する場面の「(両親には)びた一文渡したくない」という一言も、原作と同じ台詞だが、菅原大吉が絞り出すように口にすることでその切実さが驚くほど増していた。

 毎回登場する料理の数々も、原作以上に手順を丁寧に見せてくれるためわかりやすく、お料理ドラマとしても見応えがあった。漫画原作の理想的なドラマ化だったといえるだろう。(岩根彰子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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