なぜ実習生たちは来日数年で死ぬのか〜NHKスペシャル「夢をつかみにきたけれど ルポ・外国人労働者150万人時代」

ギャラクシー賞月間賞:NHKスペシャル
「夢をつかみにきたけれど ルポ・外国人労働者150万人時代」

7月13日放送

21:00〜21:49

日本放送協会

 

 浄土宗日新窟のベトナム人僧侶タム・チーさんは来日12年。ベトナムからの留学生や技能実習生が急増するなか、突然死や自殺など原因のわからない死が相次ぎ、この2年で自ら供養したベトナム人は55人に上る。なぜ元気な若者が来日して数年で亡くなるのか。タム・チーさんが手許に残した55人の死亡記録を基に、若者たちの足取りを辿ったドキュメンタリー。

 

 留学生のアインさんは貧しい農村出身で、学位を取って新たな人生を拓く夢を抱き、6年前、斡旋業者に100万円を借金して日本に留学。しかし今年2月銚子の海岸で溺死体で発見された。密漁中の事故との疑いだった。彼が入学した日本語学校は授業がおざなりで、当時の学校関係者は「留学生は“金づる”」「希望に燃えた子がどんどん色褪せていった」と証言する。1年後、アインさんは新たに学費30万円の請求を受け退学、在留資格を失い不法滞在者としてどんな仕事でも引き受けなければならない暮らしを強いられた。

 

 一方、技能実習生として来日したグェンさんは職場で脳梗塞となり、後遺症と医療費も加わって約500万円の借金を抱えたまま車椅子で帰国。厳しい現実と向き合うこととなった。外国人技能実習制度は、国際貢献の名の下で途上国の若者に技能・技術を教え、自国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としている。しかし実習先でのトラブルが絶えず、この5年間で2万6000人もの実習生が失踪するなど、国際社会からは労働搾取だとの批判も上がっている。

 

 現在、在日ベトナム人労働者は31万人。この5年間で8倍に急増、増え方は他の国を圧倒しているという。総じてベトナム人は穏やかで家族・同郷人を大切にする印象がある。日本語力が低ければ、なおのこと自ら声を上げるのは難しいだろう。「外国人労働者150万人」のリアルな現実をベトナム人から描いたこの企画には妥当性を感じる。彼らを安価な労働力としか見ないのは、人を経済力や生産力で評価したがる傾向と同根。改正入管法が施行された今、こうした実態を報道し続けることに大きな意義がある。(細井尚子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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