2019参議院選挙のテレビ報道 ニュース番組は極端な低迷 かろうじて健闘したワイドショー

報道番組に喝!【NEWS WATCHING】79
文=水島宏明

“報道のテレ朝”の顔は
もはや「報ステ」でなく「モーニングショー」

「若者よ、選挙に行くな!」。そんな挑発動画が話題になっていると、参院選の選挙期間中に各社がニュースで報じていた。高齢の女性や男性たちがカメラ目線で若者たちを挑発する。7月19日のテレビ東京のニュース「ゆうがたサテライト」では映像を制作した会社・笑下村塾の代表としてお笑いタレントのたかまつななさんが登場した。彼女はNHKでディレクターもしている。メディア企業で働く人間がそんな挑発的な発信ができる時代になったことは喜ばしい。

 ところが、参院選の選挙期間中、ニュースなど報道番組や情報番組は極端に低調だった。「各党の主な政策」を並べるボード、「注目の選挙区」の候補密着取材、挑発動画などの若者の投票率向上の秘策を伝えるなど、金太郎飴のように同じようなものばかり。しかも国政選挙として17年衆院選や16年参院選などと比べても明らかに選挙報道の量は少なかった。18歳、19歳の若者の投票率が31%あまりと、前回比で14ポイントも低下したことで、TBSテレビ「あさチャン!」でメインキャスターを務める夏目三久が「おおいに私たちの報道の仕方に問題がある」と反省を口にした。

 事態は本当に深刻だと言っていい。しかも、選挙期間中には「政党要件を満たさない」という理由で各社のニュースで露出がほぼゼロだった山本太郎が代表を務める「れいわ新選組」がSNSを駆使して2議席確保し、政党要件を満たしたことはテレビ報道の「影響力低下」を象徴的に物語っている。

 テレビの取材陣の報道力が低下した、というわけではない。例えば投票締切後に放送された7月21日夜の開票特番を見てみると、日本テレビ系の「zero選挙」ではさまざまなスクープ映像を放送していた。自民党が安倍総裁の演説への妨害を避けるため、反対派が「安倍辞めろ」などのプラカードを掲げようとすると、青い旗で囲んで聴衆に見えなくしてしまう。抗議するヤジが出れば、賛意のヤジで消してしまうなどの“作戦”の一部始終を映像で見せていた。さらに安倍総裁が遊説に回った北海道選挙区では、総裁専用車のなかに自民党が公明党の支持団体から票を回してもらう見通しを書いたメモがあるのを発見して撮影した。映像のスクープ報道と言えるものだが、これらが投票日の前になぜ報道されないのか、成果を認めつつも疑問が残った。

 参院選の期間中のニュース番組は全体的に低迷、低調だった。例えば、報道に強いという印象があるテレビ朝日の「報道ステーション」も東京、大阪、秋田などの「注目の選挙区」報道をわずかにやった程度で他のニュース番組と大差なく、かつて見せた“こだわり”は感じられなかった。ニュース番組がおとなしいなか、有権者が一票を投じる選択の材料をきちんと伝えていると評価できた番組が1つだけあった。テレビ朝日の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」だ。選挙期間中の12日間で参院選を扱った回数は「報ステ」の7回を上回って9回だったほか、1回あたりの放送時間も参院選だけで毎回30分から50分程度。年金、消費税、憲法改正と自衛隊、憲法改正と非常事態条項、地方議員の年金、皇位継承論議など、選挙の争点となりうる問題点を挙げ、専門家による分析を織り交ぜながら各党の政策を放送した。他局も含めてニュース番組や情報番組が選挙を扱わないなかで異彩を放った。だが、憲法9条に自衛隊を明記する条項を加えることの意味や緊急事態条項について2回に分けて憲法学者に分析させたり、皇位継承について各党の考え方を見せたりすることは、かつてなら「報ステ」がやっていたことだろう。個人的な印象だが、「報ステ」はもはや“報道のテレビ朝日”を代表する番組といえない。参院選において「報ステ」は「モーニングショー」にそのお株を奪われた。

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