見直されるべき“原爆映画”の存在〜ETV特集「忘れられた“ひろしま”〜8万8千人が演じた“あの日”〜」

ギャラクシー賞月間賞:ETV特集
「忘れられた“ひろしま”〜8万8千人が演じた“あの日”〜」

8月10日放送
23:00〜24:00
日本放送協会

タイトルが示すように、被爆者自ら参加して映画史上最大のエキストラで制作したにもかかわらず、存在そのものがなぜか忘れられてしまった『ひろしま』(関川秀雄監督)。映画本編のラストシーンで2万人の“本物”のエキストラの行進に圧倒され、文化的な財産価値を実感したと同時に、その疑問が私の撮像管にも焼きついてしまった。月丘夢路もノーギャラで出演し、市民が持ち寄った数十万点のリアルな小道具・衣類などの話題があっても、なぜ忘れ去られたのか? 先人の埋もれた作品を掘り起こす作業も映像関係者の使命なので、文化財継承と反戦を訴える小林開さん、オリバー・ストーン監督などの映画人たちや、サーロー節子さんなどのインタビューで厚みを増した本作品と、16日深夜の映画全編の放送は月間賞に値する。

 同じ原作の『原爆の子――広島の少年少女のうったえ』から生まれた新藤兼人監督版の存在があることは番組で触れていないが、「原爆映画というと新藤監督の『原爆の子』だった」と見る評論家がいるように『ひろしま』の存在は薄い。物語性を前面に出した新藤版に対して、関川版は徹底的に再現にこだわったドキュメンタリー性が特徴であると今回よく理解できた。

 米軍が広島の惨状を知らせようとしなかったプレスコードの存在や、反共政策も影響したと番組は言及しているが、タイトルの『原爆の子』と『ひろしま』のインパクトの差、また、その後の両監督の作品群の印象から新藤版を代表にしてしまったとも考えられる。それは、中部太平洋の核実験による被曝マグロ船が延べ約1000隻あったのに、第五福竜丸のたった1隻が被曝したかのような誤解に似ている。しかし、単純に類型化してしまうタブロイド思考は、多様性を失い思考停止の危険があることは言うまでもない。そういう意味でも本番組と『ひろしま』の存在は大きい。

 この放送前にチケットを入手できたので、川喜多映画記念館で満員の本編上映会に参加することができた。関川監督を補佐した小林太平氏のお孫さんたちによる再上映活動も多としたい。(福島俊彦)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

1

関連記事(外部サイト)