昭和史の空白を埋める第一級資料〜NHKスペシャル「昭和天皇は何を語ったのか〜初公開・秘録『拝謁記』〜」

ギャラクシー賞月間賞:NHKスペシャル
「昭和天皇は何を語ったのか
〜初公開・秘録『拝謁記』〜」

8月17日放送
21:00〜22:00
日本放送協会

 初代宮内庁長官であり、その前身である宮内府からトップを務めていた田島道治が、昭和24年から5年にわたり昭和天皇との対話を詳細に記録した「拝謁記」。そこには昭和天皇が繰り返し戦争への後悔を語り、悔恨と反省を国民に表明したいと希望していたことが記されている。まさに超一級の史料の発見である。

 平和条約発効後の独立回復を祝う式典での「おことば」に悔恨と反省を盛り込みたいとする天皇に対し、当時の吉田茂首相から、それは天皇への戦争責任や退位への議論につながる可能性があるとの意見が出され、「おことば」案から削除される。その過程などが田島と昭和天皇の対話のなかに生々しく描かれており、旧憲法から新憲法へ、すなわち象徴としての天皇へと移る時代の経緯や、天皇がその時どのようなことを意識していたのかまでもが、そこには描き出されている。

 この「拝謁記」はまさしく奇跡的に残っていた、なおかつほかにはない類の史料であろう。そしてその内容を、複数の専門家の協力で綿密に多角的に分析していくことで、この番組は昭和史の貴重な一場面に迫ることができている。ジャーナリズムの大きな役割の一つは、記録を残すことで歴史を刻み、後世に残すことである。同局の別番組だが二・二六事件の海軍側の記録といい、そしてこの拝謁記といい、これまで歴史上のまさに空白であった部分を探し出し、それまで見えていなかった部分を見えるようにすることに成功した貴重な作業であると言っていい。その探索と発見の労力にも敬意を表したい。

 占領期の昭和天皇のほぼ肉声が推察されるこの記録からは、敗戦から独立日本へと向かうなかで天皇制はどうあるべきか、戦後日本をどう考えるかについてどのような議論がなされたのか、さまざまな新たな発見が含まれていて驚きを隠せない。のみならず、昭和の戦争とはなんだったのかを、改めてわれわれに強く問いかけてきてもいる。昭和天皇の悔恨や想いから何を考えるべきなのか、それはいまだ私たちの大きな課題であるのだと強く感じた番組である。(兼高聖雄)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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