若者の闇落ち描くダークエンターテインメント〜ドラマイズム「スカム」

ギャラクシー賞月間賞:ドラマイズム
「スカム」

7月2日〜8月27日放送
25:28〜25:58
毎日放送 avex pictures 「スカム」製作委員会

 オレオレ詐欺に「ガチに就職」した大卒青年の破滅を描いたダークエンターテインメント。深夜枠を生かした大胆なバイオレンス描写を交え、行き詰まりの現代社会を疾走感溢れるタッチで描いた快作だ。

 ルポライター鈴木大介のノンフィクション『老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体』(ちくま新書)を原案に、若者を勧誘する犯罪組織の手口が描かれる。彼を突いてくるのは、老人天国で割を食う若者層、という不公平感。経済を回さない「老害」たちの死に金を、社会に還元するのだという使命感だ。リーマン・ショックによる新卒切りという不条理を体験した主人公、草野誠実(杉野遥亮)には、こんな御託も響いてしまう。「老害ぶっ潰す!」と燃える彼も結局、組織にだまされ搾取されているのだという二重構造が分厚い。

 スーツを着て出社し、仲間を得てがんがん成果を上げ、上司から「選ばれし5人」と褒められ、仕事のセンスを買われて店長に。こんな場所で努力、友情、勝利に歓喜している誠実の青春が不穏でやるせない。3月の月間賞となったNHKスペシャル「詐欺の子」(主演・中村蒼)は被害者との出会いで変わっていったけれど、こちらは突っ走ってしまった人の物語。億のノルマ、仲間の裏切りと死、母親のまさかの参戦など、怖い報いでむき出しの人間ドラマが描かれる。

 連ドラ初主演、杉野遥亮の好演も光る。尊敬するボス役の大谷亮平、鬼軍曹ぶりが素晴らしい和田正人、憎めない相棒の前野朋哉ら魅力的な共演者を得て、自ら墜ちたダークサイドでも居場所を失う「普通の若者」の顛末を、大小さまざまな表現で立ち上げてくれた。夢破れた悔し涙、まるで小学生のような大騒ぎの逮捕シーンなど、どれも送り手の志と熱量を感じる名場面。新卒切りに遭わなければ無縁だったはずの地獄を共有しながら、ボタンを掛け違えたらこれは自分だったかも、という読後感がずっしりとある。

 「世の中厳しいって? 誰も助けちゃくれないって? ふざけんなよ」。1話のセリフがまったく違う意味に回収されるラストに救われた。(梅田恵子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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