激動の政変が塗り替えるメディア地図

新しいニュースメディアの台頭

 民放のニュースでも視聴率の上乗せがあったが、最も躍進したのは3年前に開局されたニュース専門チャンネル「Oe24・TV」だった。保守系タブロイド誌が同社のオンライン動画サービスを拡張した形で生まれたテレビ局だ。「Oe24・TV」によると、シュトラッヘ氏が謝罪会見をし、再選挙が決まった日の平均視聴者数は35万人(占拠率2%)で、開局以来の高視聴となった。また、連立崩壊からEU議会選挙の投票日までの1週間で、12〜49歳の視聴シェアが1・4%となり、初めてオーストリアの民放「トップ5」に入ったという。

 「Oe24・TV」の強みは、オーナーが著名なジャーナリストである点で、自らがトークショーのホストになり、大物政治家を次々と登場させ、インパクトのあるインタビューをしている。またタブロイド新聞のサイトでは、「Oe24・TV」がライブ視聴できるほか、新聞記事を補完する形で動画ニュースが掲載されており、高いオンデマンド視聴回数を得ている。

 欧州では、紙媒体がオンラインで熱心に動画サービスを行っており、「Oe24・TV」の成功は、メディア融合のサービス形態にも起因する。

 振り返ってみると、問題の動画をスクープしたのは、南ドイツ新聞とシュピーゲル誌で、それぞれのサイトで動画(写真左)を公開したほかユーチューブでも同時公開している。

 話をオーストリアに戻すと、同国の政治空白を埋めたのは、裁判官や官僚だ。新政府ができるまで政治家が一人もいない「暫定政府」が行政を司っている。皮肉だが、そのおかげで各党は9月末の選挙に向けて激しい戦いを繰り広げており、国民も相変わらず高い関心をもって報道番組を見ている。 

 紙媒体のテレビ事業進出に対抗し、民放局のプルスは、9月から新しいニュース専用チャンネル「プルス24」を開局した。報道番組はどこも好調で、プルスは参入する余地があると判断したのだろう。

 ここでも感心したのは徹底した融合サービスで、同チャンネルは地上波、衛星、ケーブル、IPTVで視聴できるほか、開局当初からライブストリーミングやオンデマンド視聴が可能で、スマホ向けにアプリも用意されていた。

 コンテンツ面でも、工夫をしている。選挙を前に各チャンネルでは、党首インタビューや、政治討論会など、さまざまなフォーマットの番組を放送しているが、「プルス24」では、党首インタビューの代わりに、タウンミーティング形式のスタジオセットを作り、司会者だけでなく一般市民が党首に対して厳しく質問する演出をした。画面には、答える党首と反論する質問者の表情が2分割画面で映し出され、緊張感が伝わってくる。これまでにない新鮮味を視聴者に提供した。政情不安は今も続いているのだが、メディアは活気づいている。

■ライター紹介文
いなき・せつこ 元日本テレビ、在ウィーンのジャーナリスト。退職後もニュース報道に携わりながら、欧州のテレビやメディア事情等について発信している。

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