地下アイドルとオタクを描いた見事な脚本〜よるドラ「だから私は推しました」

ギャラクシー賞月間賞:よるドラ
「だから私は推しました」

7月27日〜9月14日放送
23:30〜23:59
日本放送協会

SNSで「いいね」を“押し”てもらうのが生きがいだったアラサーのOL遠藤愛(桜井ユキ)が、あるきっかけから地下アイドルのハナ(白石聖)を“推す”ようになり、最終的にはストーカー化した彼女のファンの背中を“押し”てしまう。第1話で提示されたこの出来事の経緯を、取調室での供述という形で愛が刑事に語っていく。そしてその裏には、もうひとつの真実が隠されているという、サスペンス仕立ての構成が見事だった。

 しかし、このサスペンス要素がなかったとしても、本作は十分に楽しめただろう。元地下アイドルの姫乃たまが考証を担当していることもあり、地下アイドルの活動実態やオタクあるあるなど、多くの視聴者にとって未知の世界の面白さがリアリティを持って描かれていたし、地下アイドルグループ・サニーサイドアップのメンバーも各々キャラクターが立っていて、レベルの高い楽曲も含め、思わずファンになってしまいそうなほど魅力的だった。

 外からの「いいね」ではなく、自分のなかから沸きあがる情熱に従って動き始める愛自身の変化を、単に前向きなものとしてだけではなく、その危うさも含めて描いていたのもリアルだ。「推す」=「お金を落とす」ことでもあるという現実。だからこそ「推す」側と「推される」側の関係は、ささいなことでバランスを崩してしまう。そうした関係性のねじれを正面から描きつつも、オタクが推しを応援したいと願う気持ちそのものの熱量と純度は、きちんとドラマの中心に据えられていた。それはある場面で愛がハナに言う「ハナちゃんが大事にされてて、うれしいです」という何気ない台詞に集約されていたように思う。

 この見事に練られた森下佳子の脚本を、若手演出家たちの挑戦的かつタイトな演出がさらに魅力的に仕上げていた。その集大成のような多幸感あふれるキレのいいラストシーンは忘れられない。30分×8回とは思えないほど、物語、キャラクター共に厚みのあるドラマだった。(岩根彰子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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