ポジティブに労苦を乗り越える家族〜NNNドキュメント'19「大胡田家の風景〜全盲の夫婦がみつけた家族のかたち〜」

ギャラクシー賞月間賞:「大胡田家の風景
〜全盲の夫婦がみつけた家族のかたち〜」

9月15日放送
25:05〜25:34
読売テレビ放送

 12歳のときに両目の視力を失いながらも、司法試験に合格し弁護士として活躍する大胡田誠さんと、同じく全盲の妻・亜矢子さんに密着した。障害を持つ登場人物による奮戦記=硬派な社会派作品とのイメージで見始めたが、実に明るく微笑ましい内容に見ているこちらのほうが元気づけられた。それはすべて、この夫婦のポジティブで楽天的な姿勢に由来する。起伏の少ない展開だが、そうに違いないと納得した。実際には幾多の労苦があるのだろうが、家族はそれらをいくらでも乗り越えることができる、とのメッセージが番組全体から伝わってきた。

 そもそも障害を抱えながら5度目の挑戦で司法試験に合格し、社会的弱者のために尽くす誠さんの活動自体、頭が下がる。その彼は家庭ではどこにでもいる子煩悩な父親。娘と息子、そして親族の力を借りながら、ほかの家庭と変わらぬ暮らしを送る。そこで気づくのが亜矢子さんの存在だ。同じ障害を抱えるからこそわかるあうんの呼吸で夫を支え、子どもに愛情を注ぐ。

 だからこそ妻の姿に引き込まれる。象徴的な場面は二つ。ベランダで洗濯物を干しているとき、亜矢子さんは靴下を落としてしまう。それがどこかわからぬ彼女は手探りを始めるが、息子がエアコンの室外機の裏に落ちていることを教えてくれる。ハラハラする場面だが、褒められて喜ぶ息子が母親に抱き着くところなんて、映画のようだった。

 さらに亜矢子さんがガスコンロで玉子焼きを作る場面。考えただけで恐ろしいし、できるわけがないと思ってしまう。案の定、できあがったのは形がぐしゃぐしゃの玉子焼きもどき。危なっかしい手つきに見かねた娘が「やけどしても知らないぞ」と口走るが、亜矢子さんは「やけどが怖くて料理ができるか!」と、からりと言い放つ。この瞬間、こっちはストレートパンチを食らってしまった。

 ちょっとへこんでしまった人も、これを見たらきっと何かいいものが見えてくるはず。夫婦と制作者に感謝したい。(旗本浩二)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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