詐欺を巡る「顔=人間性」の喪失〜土曜ドラマ「サギデカ」

ギャラクシー賞月間賞:土曜ドラマ
「サギデカ」

8月31日〜9月28日放送
21:00〜21:49
日本放送協会 NHKエンタープライズ

 「サギデカ」は、特殊詐欺などを扱う捜査二課の今宮夏蓮刑事を主人公にしたドラマである。その今宮には二つの大きな出会いがある。一人は詐欺グループのかけ子の加地という青年。もう一人はバイクを通じて知り合う廻谷という男だ。

 加地は詐欺集団のトップ“首魁”を追い詰めるために、捜査に協力をすることになる。一方、今宮と廻谷の間には恋愛感情が芽生えるのかと思いきや、廻谷が詐欺集団のメソッドを作る“頭脳”として関わっていたことが発覚。また廻谷は新薬の認可に向けて動いており、政治家へのルートを確保するために裏社会とつながっているという側面もあった。詐欺で騙される高齢者の被害で得た資金をもとに、多くの人を助ける新薬の開発が成り立っていて、大きな善のためには小さき存在を見捨ててもいいのかということも問う結末となっていた。

 取り調べをする際、今宮は廻谷に「あなたの話には人の顔が見えません」と告げる。一方の加地は詐欺集団に関わっていたときは、被害者の顔が見えていなかったし、自分自身にも顔がなかった。第1話で今宮が加地に初めて取り調べをするとき、彼は身分を証明する証拠を自宅にもどこにも残していなかったが、今宮が彼の故郷まで行き、彼が心の拠りどころのように毎日聞いていた曲から彼の名前を突き止める。今宮の熱意のある行動が彼の顔を取り戻したのだ。

 今宮は、振り込め詐欺の被害者に寄り添いすぎたり、刑事であるのにいろいろな人に共感しすぎたりするところもあったが、その気持ちが加地のような存在を救ってもきた。一方、世の中には同じように接しても、廻谷のように心が1ミリも動かない者もいる。結局、廻谷の件は政治家によってもみ消され無罪放免となる。

 夢物語や理想的な結末ではない現実的な結末に打ちひしがれはしたが、今宮が捜査二課からいわゆる“ショカツ”に異動になっても、廻谷の罪を明らかにしようと諦めない姿に希望を見出し、また続編の制作に期待したいと思った。(西森路代)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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