今知るべき1964年オリンピックの闇〜NHKスペシャル「東京ブラックホールU 破壊と創造の1964年」

ギャラクシー賞月間賞:NHKスペシャル
「東京ブラックホールU
破壊と創造の1964年」

10月13日放送
21:00〜21:59
日本放送協会

 現代日本を生んだ終戦直後の混沌とした「闇」のなかに、見事な合成技術で山田孝之をタイムスリップさせた第一作から2年。今回送り込んだ先は「1964年東京オリンピック」の「闇」だ。前作より進化した合成にも目を奪われるが、「TOKYO 2020」前夜の今だからこそ立ち止まって考えさせられたことが、委員12人中8人推薦という高評価に結びついたようだ。

 まずその八人八色の感想を紹介しておきたい。「希望に満ちていた時代の陰にあった五輪前夜の闇の部分がしっかり描かれ、前作よりブラックホール感が強く出ていた」「『三丁目の夕日』的に美しく描きがちだが、実は日本全体がブラックだったことが衝撃」「公害から身を守る子どもたちの黄色く着色されたマスクが負の面を強烈に表現している」「東洋の魔女たちの苦悩や五輪景気の失速を知ってショックだった」「建設現場の下請け、孫請けの労働者が酷使されるなど、忘れられた戦後の闇を克明に描いている」「他国に対して不衛生とか遅れていると軽視しがちだが、当時の東京も同じような状況だった」「前回に続き山田孝之は適役。どの時代に行ってもはまる」「テレビは五輪無関心派や批判派をも巻き込んで日本中の空気を一変させた。テレビが持つ怖さを自画像として描いている」「非正規、貧困、離農……五輪のツケは現代と相似形をなし、私たちへの問題提起になっている」など。

 各委員に共通するのが、1964年東京オリンピックの成功体験の陰に隠れてしまった負の部分に言及していることだ。ハードディスクなら復旧できても、人間の脳から忘れ去られたものを修復するのはきわめて難しい。しかも2020年に成功(するかどうか断定できないが)してしまうと、さらにそれは困難になると、この番組は警鐘を鳴らしていて、ブラックホールに呑み込まれないためには、デリートされない記憶領域を確保する必要性を説いている。わが地元の心の文化遺産とも言うべき東神奈川の名バー「スターダスト」を、あのようにBar KOYUKIとしてラストシーンに使ったセンスにも拍手を送りたい。(福島俊彦)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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