テレビの災害報道 防災・減災情報の発信は十分か?網目の粗い情報選別に落とし穴

災害報道の主役は電波メディア
災害時の発信力にこそ存在意義

 情報伝達手段としてネットの役割は比重を増すばかりである。しかし、放送人にとって最も大切な不文律がある。それは災害報道もしくは防災・減災に資する情報を発信する主役はテレビやラジオという電波メディアが担わなければならないということだ。公共財である電波を国民から預かり、その生活向上に寄与する――その役割と責任を担うがゆえにテレビとラジオは公共的な存在であり続けることができる。

 ところが、実際にはテレビの災害報道よりネット情報の収集に重きを置く風潮が生まれている。世田谷区の事例はそれを裏づける証左だろう。別な見方をすれば、テレビの災害報道は視聴者のニーズに応え切れていないと言えるのかもしれない。テレビの災害報道は価値の高い情報を上から順番に選別して伝えるのが一般的であり、全体的なバランスに意を配りすぎる感がある。その裏返しとして中身が総花的になりがちだ。避難所の空き情報など、より「身近で」「喫緊の」情報は軽視される傾向にある。いわば情報を選別する網の目が粗過ぎるため、必要不可欠な情報がこぼれ落ちてしまうのではないか、と私は感じている。

 近年、テレビ報道は情報量を増やすため「L字画面」を導入し、そこに細かな文字情報を随時掲載する仕組みを構築してきた。それでも、十分な量と質に達しているとは言い難い。

 テレビの災害報道に対する視聴者の信頼を高めるための一歩として、まず従来のテレビ的な尺度を見直し、情報選別の網の目をより狭めることを私は提案したい。次に緊急の特別番組を放送する場合は総花的なバランス重視の報道姿勢を改める。そして災害の発生が迫っている地域を重点的に繰り返し取り上げ、最新の情報を丹念に拾い上げて発信する。そうした変革の試みを一歩ずつ進めてはどうだろうか。

 電力の確保ができる限り、電波メディアの伝達機能は存続する。サーバーの容量とは無関係に大量の情報やデータを送受信できる。その特性と強味を最大限に発揮できるメディアであることを今一度確認しよう。

いとう・ゆうじ 元毎日新聞アフリカ特派員、元TBSロンドン支局長、元TBS外信部長。

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