映画館閉館から見えてくる地方都市の日常〜ザ・フォーカス「さよなら前田有楽〜成人映画館最後の日々〜」

ギャラクシー賞月間賞:ザ・フォーカス
「さよなら前田有楽〜成人映画館最後の日々〜」

11月17日放送
25:20〜25:50
RKB毎日放送

 1954(昭和29)年から続いてきた映画館が閉館した。北九州・八幡の有楽映画劇場。通称“前田有楽”と呼ばれ、昭和から平成の65年間、70年代からは成人映画専門館だった。戦後の復興を支えてきた八幡製鐵所のお膝元に、当時は映画館が20近くあったという。そのなかで唯一生き残ったのがこの映画館だ。閉館を迎えるまでの日々を丁寧に追って、昭和の空気を感じさせる映画館の起承転結を見る思いがした。

 閉館の理由は、アダルトビデオの普及などによる観客の減少や映画館をひとりで切り盛りする館長の後継者がいないことだという。閉館を惜しんでここを訪れた人たちのなかに女性客や女性出演者の姿が目立ったのには驚いた。東京からやってきた女性もいて、必ずしも地元育ちばかりではない。女性たちがそれぞれの形で別れを惜しむ姿が、実に明るく印象的だった。

 映画館のなかで長年手つかずだった場所からは大量のポスターや看板、さらには当時フィルムを運んでいた自転車などが発見された。どれもが劇場ゆかりの品で昭和の空気を感じさせてくれるものばかり。館長は有楽の名前を残したいとの思いから、“前田有楽”のファンで昭和文化に魅せられた青年にこの品々の管理を託すことにした。給料袋片手の客で満員になった時代から閉館まで、時代の文化や空気そのものが失われてゆくプロセスに目を向けた番組制作者の取材姿勢に拍手を送りたい。

 制作したのはRKB毎日放送。番組のデスク、プロデューサーはいずれも女性で、プロデューサーはJNN前ソウル支局長である。女性コンビは九州地区各局のドキュメンタリー番組を担当している。

 RKBの位置する福岡県は、中国大陸、台湾、朝鮮半島のいずれにも近く独自の文化がうごめく真っ只中にある。それぞれの地域との関係も昭和の時代とはかなり違っている。そのさなかで語られるドキュメンタリー論。今後もこの番組のように、九州各地のさまざまな現実に目を向けながら、庶民の小さな日常をきめ細かく描いていくことを期待している。(岩城浩幸)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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