悪質な書き込みが追いつめる韓国芸能界事情

文=ジャーナリスト
安 暎姫

アイドル、俳優の相次ぐ自殺

 韓国の放送局「JTBC」は、2019年6月から「悪質な書き込みの夜(日本語訳)」という少し変わったバラエティ番組を放送した。「スターたちが自分に付きまとう悪質な書き込みに対して虚心坦懐に話し合い、正しい書き込みのマナーや文化を考えてみる」というのがこの番組の趣旨である。

 MCは4人で、芸人出身の名司会者であるシン・ドンヨプ、芸人のキム・スク、歌手出身だがバラエティに強いキム・ジョンミン、そしてアイドル出身のセレブ、ソルリが出演していた。「出演していた」と過去形である理由は、ソルリはすでにこの世におらず、彼女の死によって番組も打ち切りになったからだ。

 韓国の芸能人は、SNSに悪質な書き込みをされる場合が多く、人気の代価として当然のように付きまとう。それをわざわざ「エゴサーチ」させて読ませるというのが冒頭の番組だ。非常に過酷ではないか。その4人のMCのなかにバッシングされやすいソルリがいた。番組では、MC以外に有名人ゲストを呼び、彼らに対するネットの書き込みをみんなで見ながら意見を交わすなどする。ソルリ自身への誹謗中傷もあったが、番組内での彼女はクールにそれらをかわし、自らの意見をきちんと述べていた。

 しかし、19年10月にソルリは自殺した。そして、その親友であった元KARAのメンバー、ク・ハラも11月に自殺してしまった。さらに、12月には若手俳優のチャ・インハが自殺した。K―POPはBTS(防弾少年団)旋風によりさらに影響力を増し、韓流ドラマも依然人気を博しているのに、なぜその主役となる人々が自ら命を絶ってしまうのだろうか。

 韓国では、10万人当たりの自殺者数が26・6人(韓国統計庁、死亡原因統計、18年)。全体の死亡原因のうち5位だが、10代から30代の死亡原因は1位、40代から50代の死亡原因は2位だ。これは自殺が深刻な社会問題であることを示している。OECD諸国のなかで自殺率が1位という不名誉なタイトルも冠している。

1 2 次へ

関連記事(外部サイト)