唯一無二のドキュメンタリーコント〜「全力 ! 脱力タイムズ」

ギャラクシー賞月間賞:「全力 ! 脱力タイムズ」


11月29日放送
23:00〜23:40
フジテレビジョン

 コント番組を作ることが難しいと言われている時代に、くりぃむしちゅーの有田哲平が、ニュースキャスター「アリタ」に扮した「報道番組」の設定で、全編にわたって精緻に作り込んだ笑いに挑戦している稀有な番組だ。ゲストの芸人が何時間もかけて打ち合わせした本題は一向に始まらず、「全力解説員」と呼ばれる専門家たちが「○○といえば……」とまったく関係のないものを長々と解説したり、著作権の関係で映像を加工していると前置きし流れたVTRでは大御所タレントをものまね芸人が演じていたり、インタビューを切り貼りし、あたかもフジテレビを痛烈に批判したように編集したりと、挟まれるVTRも含め全編ボケ。

 それに出演者のなかでただひとり何も知らされていない芸人が必死にツッコんでいく。ひたすらバカバカしいが、そのなかにテレビ的な演出や報道の切り取り方、やらせ問題やコンプライアンス、ハラスメントへの過剰な配慮など、メディアに蔓延る諸問題を批評的に皮肉っていたりもする。悪ふざけと裏切りの連続で予測不能。芸人はルールが壊され追いつめられていく。唯一無二のドキュメンタリーコントといえるだろう。

 この回のゲストは柴田英嗣。彼らのコンビ「アンタッチャブル」は、柴田が問題を起こし休業した約10年前から事実上の活動休止状態。お笑いファンの間で復活が待望されていた。柴田は以前から番組にゲスト出演し、そのたびにアリタから「最後に、アンタッチャブルに漫才をやってもらいましょう」と振られ、バービーやコウメ太夫など偽の相方が呼び込まれ困惑するというのが定番となっていた。この日も最初は、相方の山崎弘也に似ている俳優の小手伸也が登場。それで終わると思っていた矢先、本当に山崎が登場するのだ。ずっと「フェイク」をやり続けたこの番組自体の歴史が振りになったサプライズ。それを事前告知まったくなしに行ったのも粋だった。彼らが売れていない若手時代から強い絆があった有田の番組だからこそ実現したであろう復活に、彼らのリアルな感情が溢れ出ていた。(戸部田 誠)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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