令和の家族を描いたホームドラマの快作〜「俺の話は長い」

ギャラクシー賞月間賞:「俺の話は長い」


10月12日〜12月14日放送
22:00〜22:54
日本テレビ放送網 オフィスクレッシェンド

 屁理屈を武器に実家に居座る31歳ニートと、自宅リフォームで転がり込んできた姉一家。3カ月限定の共同生活が、手詰まりだったそれぞれの人生を動かしていく。会話劇に定評がある金子茂樹が30分×2本立ての挑戦で描いたホームドラマの快作だ。

 同居初日のすき焼き論争で個々のキャラクターを描き分けた1話があざやか。「肉の食べ方として間違っている」という満(生田斗真)の屁理屈体質と、一歩も引かない姉、綾子(小池栄子)。2択の修羅場に笑わされ、「すき焼きを肉料理に分類している時点で浅い」という姪っ子、清原果耶の登場でさらに笑った。「私が悪い」と三崎千恵子風に立ち回る原田美枝子、しみじみと発言権が低い安田顕。食べ物ひとつでケンカになる寅さん的な導入に俳優陣の力量がにじむ。

 夢だったコーヒー店を潰して以来6年間働いていない満。ハローワークには行きたくないが、学校に行きたくない姪っ子にはあれこれ言う。コーヒー道具への未練は断ち切ったが、ベースギターに未練がある義兄のことは応援したい。人物のちょっとした接点が手をつなげ、誰かの一歩になる。会話ありきのホームドラマ、アナログコミュニケーションならではの力だ。

 「なんで人生の大事なことに限って誰も教えてくれないんだろう」。素直じゃないおじさんと姪っ子との夜の海は、みずみずしい名場面だった。結局片づけた段ボール、借りてくれたDVD、まさかのロールキャベツ。雄弁に語る小道具だけパッと見せて、感動を深追いしない各話のラストも、小ざっぱりとして粋だ。

 満が採用面接へ向かう最終回。新しい世界へ、荒川の橋を一歩ずつ渡っていく。町内会バンドのたどたどしい『ロッキーのテーマ』と、土手から見上げて晴れ晴れと泣く姉の大声援。「ヒジが下がってる!」「あごを引いて!」。中3のソフトボール大会での姉弟の姿が、生き生きと回収された。

 ホームドラマの復権を掲げたプロデューサーの志を、書ける作家とベストな役者が形にした。ONE TEAMで描いた令和の家族だった。(梅田恵子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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