歴史に揉まれたオリンピック、ブレなかったドラマ〜大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」

ギャラクシー賞月間賞:大河ドラマ
「いだてん〜東京オリムピック噺〜」

1月6日〜12月15日放送
20:00〜20:45
日本放送協会

 明治・大正のオリンピック黎明期と、東京での開催を目指す昭和。2つの時代を行き来しながら、どのように日本に「スポーツ」が根づいていったか。そして「オリンピック」が、いかに政治や国際情勢に翻弄されながらも多くの人々の志によって引き継がれてきたのか。本作はその物語を最後までぶれない視点で描き切っていた。

 日本初のオリンピック選手・金栗四三(中村勘九郎)と、1964年の東京オリンピック招致の立役者・田畑政治(阿部サダヲ)の二人が一応の主人公に据えられてはいたが、本作は徹頭徹尾、“人々”の物語だ。古今亭志ん生(ビートたけし/森山未來)や嘉納治五郎(役所広司)ら名の知れた人物だけでなく、亡き父の残した絵葉書をきっかけに志ん生に弟子入りする五りん(神木隆之介)とその家族、女でも陸上競技をやりたいという希望を持ち続けたシマ(杉咲花)や人見絹枝(菅原小春)ら女子スポーツ選手たち。さらにベルリンオリンピックのマラソンで「日本代表」としてメダルを獲った朝鮮出身の孫基禎と南昇竜や、政治にふりまわされて64年の東京五輪に出場できなかったインドネシア選手団といった、歴史の波に揉まれた人々をきちんとすくいあげる。まるで数々の小さな支流が合流して大きな流れを作るような、そんな見事な“大河”ドラマだった。

 取材チームのインタビューによれば、当時の資料や日記などを徹底して読み込み、そこから物語を作り上げていったという。過去のオリンピックや学徒出陣などの資料映像をドラマに馴染ませた演出も巧く、近代史の学び直しとしても見応えがあった。

 時代が行き来してわかりにくいという意見も聞く。しかし、それは作り手側だけの弱点なのか、視聴者側のドラマを受け止める力のひ弱さにも原因はないだろうか。そんなモヤモヤした気持ちも、高らかなファンファーレで始まり、スッスッハッハッのリズムで奏でられるテーマ曲を聞けば、頭から吹っ飛んでしまう。記録ではなく記憶に残る一作だ。(岩根彰子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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