白髪、隻眼。木村拓哉の見事なる転身〜フジテレビ開局60周年特別企画「教場」

ギャラクシー賞月間賞:フジテレビ開局60周年特別企画
「教場」

1月4日、5日放送
21:00〜23:10、21:00〜23:24
フジテレビジョン

 警察学校の若者たちと、適性を見抜いて立ちはだかるカリスマ教官、風間公親のダークな手腕。長岡弘樹のベストセラー小説を初映像化。50がらみ、白髪、隻眼。多くの俳優がやりたかったであろうこの役を、47歳の木村拓哉が生き生きと立ち上げた快作だ。

 風間に必要な「ビジュアル」と「圧」の両面で、木村は大いにはまったと思う。初白髪で臨んだミステリアス感はもちろんのこと、向き合っただけで人や場を緊張させる風間の圧に、木村の圧がよく合うのだ。工藤阿須加、川口春奈、大島優子ら売れっ子が、木村相手にリアルに背筋が伸びていて、畏怖からの尊敬という物語の展開に臨場感がある。

 緊張と不安が誘発する事件の数々。弱みを握ってスパイにしたり、昇降機の下敷きになった女性候補生を助けなかったり。トンデモな荒療治には必ず意味があり、それがわかる後日談に油断ならない愛がある。

 作品全体は、風間の鬼指導で覚醒していく若者たちの青春群像劇だ。警察官に命を救われた元教師、恋人をひき逃げで失った元デザイナー、警察幹部を親に持つマドンナなど、読後感の異なる5つの物語が小さな接点でつながる短編連作の味わいが分厚い。

 川口春奈と富田望生の友情を描いたエピソードは特に印象に残る。素質があるのに努力を怠るマドンナと、家の事情で退校せざるを得なくなった努力の虫の対比だ。警察官になる夢も、教官への淡い恋心も全部置いていった富田の万感が切なく、しっかり受け止めて覚悟を決めた川口もかっこいい。教え子の思いにあえて気づかない風間の優しさを、日課の水やりの背中だけで表現した木村の「静」の色気も新鮮だった。

 絶対服従、罰則主義、連帯責任。褒めて育てる働き方改革の時代に一石を投じるハレーション性も、エンタメとして信頼できる。「苦しんでいる人に耳を傾けるのが警察官の仕事だ」。卒業する教え子一人ひとりを握手で送り出す端正な手から、風間教官の体温が伝わってきた。またこの人に会いたいと思える。木村拓哉の転機を見た実感が、申し分ない。(梅田恵子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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