一斉休校の理不尽さを伝えた映像〜ETV特集「7人の小さき探究者〜変わりゆく世界の真ん中で〜」

ギャラクシー賞月間賞:ETV特集
「7人の小さき探究者〜変わりゆく世界の真ん中で〜」

4月18日放送
23:00〜24:00
日本放送協会

 2020年2月27日の夕方、新型コロナウイルス対策として全国の小中学校に臨時休校の要請が出された。その翌日、宮城県気仙沼市の小泉小学校で行われた「6年生を送る会」。会の終わりに校長先生から「今日で学校はおしまいです」と一方的に休校を告げられた瞬間の子どもたちの顔を、カメラが遠くから捉える。一人ひとりのその表情が、何よりも雄弁にこの臨時休校の乱暴さを伝えていた。

 東日本大震災をきっかけに始まった、対話を通じて子どもが考える力を育む授業「p4c」(Philosophy for children/こども哲学)。全国に先駆けてこの授業を取り入れた小泉小学校の6年生7人への密着取材中に起きた、卒業直前の突然の休校。その現場に偶然立ち会うことになった取材クルーは、そのまま静かに子どもたちの姿を記録していく。

 「大人の意見だけで本当に休校を決めてしまっていいのだろうか」「子どもも意見を言いたいです」など、ディレクターからの質問に本音で答える子どもたち。そして残された短い時間で「どうして子どもの意見は聞いてもらえないのか」というテーマについて《対話》を行う。この短い対話こそが、彼らにとって本当の授業、自分の頭と心で考える授業のように感じられた。番組としては新型コロナの影響によって方向転換せざるを得なかったが、逆にそのことが元々のテーマである《対話》の授業の重要さを浮き彫りにしたともいえる。

 この先、新型コロナが社会に与えた影響に関する検証番組は数多く作られていくだろう。けれど、あの瞬間とその後の子どもたちの表情や言葉を、ここまでの距離感で捉えた映像は二度と撮れない。そして学校が再開され日常が戻ってくるにつれて、子どもたちのなかからも、あのときに感じた理不尽さとそれに対する憤りは少しずつ薄れていくかもしれない。それでも、ここにその瞬間を切り取った映像が残っている。たしかに存在した7人の小さな声が記録されていたことを感謝したい。(岩根彰子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

1

関連記事(外部サイト)