日本と無関係ではない悲劇を知る〜ザ・フォーカス「ムクウェゲ医師の終わらない闘い」

ギャラクシー賞月間賞:ザ・フォーカス
「ムクウェゲ医師の終わらない闘い」

5月17日放送
25:20〜25:50
TBSテレビ

 コンゴ民主共和国で性暴力の被害者救済に取り組みノーベル平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲ医師。その活動を追い、昨年2月に放送された番組の続編だ。昨秋、来日した際の講演会の模様や新たなインタビューを織り交ぜ、アフリカの片隅で起きている悲劇が日本と無関係でないことを突きつける。

 コンゴでは、携帯電話などに使われるレアメタルが豊富に採掘され、それを資金源にしようと武装勢力が鉱山周辺の村々で女性を組織的にレイプ。家族にもそれを見せて辱めを与えることで恐怖を植え付け、採掘を牛耳っている。レイプ被害者は40万人以上に及び、医師が20年にわたって救援活動を行う病院には、年間約3000人が運びこまれる。

 被害者は生後半年の赤ん坊から90代まで。聞くに堪えない話の数々はまさにこの世の地獄だが、200人以上を暴行した犯人は「命令を断れば自分が上官から暴力を受ける」と口にし、自分が処罰されていないことも明かした。

 最大の問題は、国連も被害認定しているにもかかわらず、10年経ってもこうした犯罪の責任者が処罰されずに権力の座に居座り続けていることだ。現地で被害者支援を続ける弁護士は裁判すら開かれない現状に「もううんざりだ」と怒りを露わにする。まさに無法地帯で、それで国家と呼べるのか強い疑念をかき立てられた。それなのに「国際社会は何もしていない」と業を煮やす医師。「コンゴで起きている戦争は、女性の体の上で行われる」。ひりひりするような医師の言葉を借りて取材者の憤りがストレートに伝わってきた。

 “リタ”と日本語を口にした医師は、利他の精神こそが日本の美徳と捉え、期待を寄せる。官民共々もはや見て見ぬふりはできないが、では何ができようか。国際社会が非難したところで状況は変わるまい。現地の女性が犠牲になって作られたかもしれないスマホを見つめ、しばし考えさせられた。前作も合わせ、内向き志向に陥る現代日本人の目を見開かせるルポ。これぞ放送の役割と言える出来栄えだ。(旗本浩二)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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