伊東英朗ディレクター、16年間の追跡〜NNNドキュメント'20「クリスマスソング 放射線を浴びたX年後」

ギャラクシー賞月間賞:NNNドキュメント'20
「クリスマスソング 放射線を浴びたX年後」

5月24日放送
24:55〜25:50
南海放送

 核実験で被爆したマグロ漁船は1954年の第五福竜丸のみならず、その年だけで1000隻近くが被災し、しかもビキニ環礁の1回にとどまらず、中部太平洋各所で米英両軍が100回を超えて行ったことを、伊東英朗ディレクターはライフワークとして16年もの間追いかけている。2012年のNNNドキュメント'12「放射線を浴びたX年後」第2弾では福島第一原発事故で改めて注目され、それまでの7回のローカル放送や劇場映画も評価対象となり、第50回ギャラクシー賞報道活動部門大賞を受賞した。筆者はこの「制作者と語る会」で本作品を担当させてもらい、誠実で物腰の柔らかいご本人に接することができたが、その雰囲気とは対照的にますます鋭く、冴えわたってきている。

 取材先は自局エリアの隣県、高知のマグロ漁船に始まり、日本全国からアメリカ、そしてこのシリーズ第5弾はイギリスまで拡大した。番宣にも使われた衝撃的なキノコ雲と無防備な英兵が写るプライベート写真30枚なども貴重な取材成果となった。 

 他方、今回は特に音の使い方に注目したい。ますます生存者が少なくなる日本人漁船員と英国人兵士の証言はもとより、英兵が歌ったクリスマス島の歌そのものに存在感がある。詳細を知らされず核実験に従事して早逝した仲間たちを目にし、「政府が俺たちにしたことは最低だった 核実験は地獄だった」と歌っているのだ。さらに、英国ロケで収録したこの歌を主役として、本題を邪魔せず静かに使われている脇役のBGMも秀逸だ。

 オープニングや水爆の映像で流れた『7月4日に生まれて』のテーマ曲、後半の核実験に携わった英兵が健康不安を訴える場面で使われた『死刑台のエレベーター』のなかの曲などにより、核実験は日本のマグロ漁船や、実験場となった中部太平洋の住民のみならず、実施した側の兵士にまで深刻な被害を与えた非人道的な戦争犯罪であり、殺人行為であったと訴えている。浜野謙太のナレーション起用も成功。実現すれば3回目となる劇場映画にも大いに期待したい。(福島俊彦)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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