「黒川検事長賭け麻雀」 をめぐる報道 首相への忖度か!? メディアの役割を放棄してはいけない

報道番組に喝!【NEWS WATCHING】89
文=辻 一郎

「賭け麻雀」をお座なりに報じた
NHKとテレ朝

 5月25日、政府は東京など5都道県で最後まで継続していた新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を解除。感染のリスクはまだ残るものの、経済活動を段階的に再開した。6月5日現在、東京では「東京アラート」が発動されているが、恐れられていた感染第二波の到来をまずは免れた形で推移している。

 ところでこの緊急事態宣言下、東京高検の黒川弘務検事長が新聞記者と賭け麻雀をしていた事実が発覚したのは、5月20日である。検察組織のナンバー2が、こともあろうにこの時期、賭け麻雀をしていたことが判明したのだから、これは大ニュースである。

 当日の「NEWS23」(TBSテレビ)と「news zero」(日本テレビ)は、長時間を割いてこの出来事をしっかり伝え、日頃はこの種のニュースにあまり関心を示さない「Live News α」(フジテレビ)もそれなりに丁寧に扱った。

 ところがこれを、目立たない形で短く報じた社が2社あった。「ニュースウオッチ9」(NHK)と「報道ステーション」(テレビ朝日)である。この2社は番組の最後の「その他ニュース」の扱いで、お座なりに報じてことを済ませた。いったいなぜなのか。まさか安倍首相への忖度ではあるまいに、不思議なことだと首をひねった。最初にことを報じたのが『週刊文春』だったので、気に入らなかったのかもしれないが、伝えるべきことをキチンと報じるのがメディアの責任だ。それを放棄するのは困る。

 しかもこの黒川氏は安倍晋三首相の大のお気に入りで、重大かつ複雑、困難な事件の捜査公判に対応するため「余人に代えがたい」人物だとされ、定年の延長を閣議決定したばかりか、検察庁法改正案も彼のために用意されたと取り沙汰された。メティアがこの法案に疑念を抱き、批判を重ねたのは、それゆえである。この法案の提出時期が、新型コロナウイルス騒ぎのピークと重なったことから「火事場泥棒」と非難したのは、5月9日の「報道特集」(TBS)の金平茂紀である。

 さらに5月13日の「NEWS23」は、衆議院内閣委員会の質疑の模様をトップで伝え、コメンテーターの星浩が「今日、委員会を傍聴したが、武田良太行政改革担当相の答弁は杜撰をきわめた。特に検察庁法改正案についての答弁はひどかった」と酷評した。この13日は、緊急事態宣言が愛知、福岡も含む39県で「明日から解除」という節目の日だった。それだけにそちらをニュースで大きく扱う社が多いなか、法案審議をトップにおいた編集判断は見事だった。

 また「news zero」も13日の扱いは見送ったが、翌14日に大きく取り上げ、有働由美子キャスターが「安倍首相がコロナウイルス対策で国民に協力を求めても、国民との信頼関係がなければ実現しない。その関係を築くため首相の側も、私たちの疑問に真摯に答えてほしい」と述べ、注目された。大事なときに大事な言葉を発するのが、キャスターの役割だ。その役割を果たしていたと言える。

 「#検察庁法改正案に抗議します」とハッシュタグをつけた怒りのツイートが数百万件に達し、検察の大物OBが「この法案は検察に対する国民の信頼を損ねる」と異例の意見書を法務省に提出したのも、こうした報道が後押ししたところがあると私は信じたい。そして内閣支持率が大幅に低下したことは、5月18日の「ニュースウオッチ9」が伝えた通りである。

 これに危機感を抱いた安倍首相は、法案の今国会での採決をついに断念したが、この一連のニュースの渦中の人、黒川氏が起こした不祥事を、大きく伝えなかった社の判断はどうなっているのか、呆れかえった。一方、5月23日の「報道特集」では金平キャスターが、三つのことを指摘した。黒川氏は調査されるのではなく捜査されるべきだ、閣議決定した定年延長は取り消すべきだ、黒川氏と賭け麻雀をした新聞記者の書いた記事を検証し、筆を曲げていることが判明すれば、彼らも潔く職を辞すべきだ、の3点だ。きわめてもっともな指摘で、溜飲が下がった。

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